1 - 4 2018/05/29(火) 15:37:37.61 ID:eFpcNrS20
「あ、Kさんだ」
Kさんから頼まれてオランジーナを自動販売機で購入し、お釣りを取る時にふと十円玉に柄があるのに気づく。
ああ、これがカラコインというものか。名前だけは聞いた事あるけど、見たのは初めてだ。
電柱や路地裏にも、Kさんの顔が描かれたシールが貼られているのを見かける。弁護士として知名度が上がるのは良い事であるが、これは悪手だろう。
僕個人としても親友の顔写真が面白おかしく街中に貼られるのは気分が悪い。名古屋駅で大量に見かけた時は、エスカにまで降りれず、近くの吉野家で済ましてしまった程だ。
最初はKさんも邪険にしているし、今もしているが、ここ最近は諦めているのか「ああまたナリか。ご苦労な事ナリね」と軽くあしらう程度だ。
もうこの程度ではKさんも怒る事はなくなり、冷静になり始めた。そんな時だった。
例のオランジーナとカラコインを持ち、事務所に戻るとKさんが真っ赤な顔で顔を洗っていた。
「どうしたんですか?」
「Yくん、ついさっきそこでヤーマンの覆面をした集団に顔に粘土のような物を押し付けられたナリよ!これは遺憾の意を示すナリ!」
と、力強く蛇口の栓を締め、事務所の最大権限である国営セコムに報告する。
Kさんは国営セコムに先ほどの事を誇張して説明し、果てには殺されそうになり、上級国民だから妬んでいる的な発言をしたと嘘までついている。
よほど怒っているようだ。彼がこんなに怒るのは久しぶりだ。
最近までは冷静に、大人しく事務所に持って来たソファベッドで全裸で寝ている生活を送っているので、ここまで活動的なのは珍しい。
国営セコムに報告し終わると、Kさんはややスッキリとした顔をしていた。
「Yくん。当職は一仕事終えたから寝るナリ。後はよろしくナリよ」
と、Kさんはソファベッドに横になり、獏のうめき声のような寝息を立てて爆睡する。
しかし、これで終わりでは無かった。問題はここからだったのだ。