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448 - カワハギ 2018/11/08(木) 03:18:17.96 ID:DLbcZXN80

寒い部屋だ。
真夏なのに、寒さに身が震える。
そして耳が痛くなるほど静かだった。

そこで、私が、死体発見者になった。

――――

2019年8月31日。
街中を行き交う子供たちはすっかり少なくなり、少し寂しさを感じさせる虎ノ門の街並み。
とはいえ土曜日ということで休日の社会人たちが少しばかり歩いていた。
そんななか私はというと、今日も今日とてコカけんま。
中学生の頃SASUKEにハマり忍者の修行には強芋のである私は、窓から侵入しようと空いている窓を探していた。
服装は正装だが、あまり長いことじっとしていると怪しまれるかもしれない。
早歩きでビルの周りをぐるりと一周、横目に空いている窓を探す。
うかつなことに3階の窓が開いていた。まるで空き巣を誘っているかのように空いたがらんどうの室内がのぞいている。
鉤爪の付いたロープを投げかけ、サッシに引っ掛ける。
あとは壁を駆け上がり、室内に侵入するだけだ。
だが事件は起こるのだ‥‥‥。

あと一息…。
窓の桟に足をかけ、室内に踏み入れる。
ロープを回収し一息ついた私は、空気がおかしいことに気づいた。
やはりけんまはやめようか?警察に捕まるかもしれない、そんな怖気づいた考えさえのぼってくる。
だがこれが最初で最後の機会かもしれない、外にはセコムも居なかったし珍しく人通りもない、二度とないほど絶好のチャンスだった。
自ら勇気を奮い立たせ、誰もいない部屋のドアを開ける。次の部屋にも誰もいなかった。次のドアを開け、玄関のドアを開けて廊下に出る。
あの部屋に足を踏み入れたときから感じていた変な空気は、廊下に出て消えるどころか、ますます強く感じられた。
301は向かいだ。誰もいない廊下がやけに長く感じられる。

ドアの前に立つ。震える息を飲み込み、スマホで録画を開始する。
開くことを期待せずドアノブをひねると、ドアはあっさり開いてしまった。
玄関に入り、次のドアを開ける。

恐怖のあまり、手の震えを抑えきれずスマホを落としてしまった。
静まり返った室内に落ちるた音が響き渡る。
画面が割れ、録画中だったはずだが変な光りを発するが、気にする余裕はなかった。
なぜなら、室内の様相もさることながら、階段を上る音が聞こえる。
急いで玄関まで戻り、震える手でどうにか鍵を閉める。
あまりの震えで立っていられない。玄関の前で、半ば倒れるように蹲った。心臓が痛いほどに打つ。息ができない。

耳を澄ませると、音は4階へ向かったようだった。
転がって立ち上がって胸を撫でおろして、さてどうしよう、この状況。
もし誰かに知れたら大騒ぎだ、大変なことになる。
ひとまずあの部屋に戻り、折り重なった死体を眺める。血の量からして、死んでいるのは間違いない。
眺める。しかしそれを隠す発想など出るはずがない。

それにしても疲れた。どうせ鍵を閉めた部屋だ、誰も来るはずがない。
少しぐらい寝たって問題はないだろう。
死体の前で横になった。

――――

目が覚めた。
目の前の遺体に軽くパニックになるが、すぐに何があったか思い出して落ち着いた。
その瞬間、わたしはあるアイディアを思いついた。
本人が居なくても、本人に成り代わってしまえばすぐにはバレナイだろう。掲示板の彼らもそうなりたかったのだろうか。

わたしは台所から包丁を持ち出し、おもむろに弁護士の顔を削いだ。
この顔はかなり大きいので、わたし自身は顔を削がなくても張り付けることができるだろう。
接着剤には血糊を使うことにした。