244 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2018/02/24(土) 13:25:58.35 ID:hnP8XfYq0
「駝鳥鬼」などという言葉が最初に確認されたのは、平成の終わり頃であった。
個人情報端末の性能が上がり、誰もがインターネット上で自己表現し始めた時代である。
噂に曰く。
それは夜に現れる。それは兄弟を求めてさまよっている。それは弁護士を犯す。それは悪いものを許さない。
特徴にとりとめがなく、駝鳥である必然性がない。
この怪談じみた妖怪は、どうやって成立したのか。
駝鳥鬼はどこから来て、どこに存在しているのか。
我々が蒐集した数多の情報の中に、その手がかりがあるかもしれない……。
Struthio camelusは鳥綱に分類される草食性陸上動物。飛行は不可能だが、走力に優れる。体高は成人男性より高く、大型。
羽根は装飾に用いられ、古代エジプトでは真実と公正の象徴であった。
古来より、火や石を食うと伝えられる。
古代中国では、幽鬼とは死者のことである。
道士は死体を加工し、僵尸というものを作成できるとされる。
昔、性格の悪い料理人が駝鳥を捌いていると、ひときわ大きな駝鳥がやってきて料理人に襲いかかった。
この駝鳥は、殺された仲間のかたきを討つため、駝鳥の霊が集まってできた妖怪の一種だと解釈されている。
昔、とある名家の次男が、家のもの(悪いものとする話もある)に殺された。
家族はその次男を疎んでいたためか、碌に供養もしなかった。
そのため、次男の魂はその家を祟っているという。
用水路に行くと、今もその子の霊が、仲の良かった兄を呼んでいるそうだ。
昔の日本では、名付けの際に生まれた順番の数字を入れることが主流であったという。
とある名家で、次男に「一」の字が与えられた。これは家長が長男をいないものとして扱っていることを意味する。
それを長男が理解したとき、長男は次男の首を締め上げて殺してしまった。
それを知った家長は、長男を早くなきものにしておくべきだったと後悔したという。
航海(ここでは地球の海洋上での行動を指す)に出た仲の良い兄弟が遭難し、無人島に流れ着いた。
2人は持っていた食べ物を仲良く二等分して助けを待ったが、やがて食料がなくなってしまった。
空腹に耐えかねた兄は弟を殺し、その肉を食べて生き延び、やがて救出されたという。
海の上での食べ物の大切さを教える話として、海賊たちの間で語り継がれている。
有名youtuber(個人で映像を発信する者)で駝鳥を飼っていたものがいた。
駝鳥は視聴者たちにも愛されていたが、ある日突然死んでしまった。
有名youtuberはその駝鳥を解体・料理・喫食する動画を生放送し、即座に大炎上。有名youtuberは引退した。
有志によってその駝鳥の墓が建立された。命日には今でも多くのものが墓参りに来るという。
構造体の墓から情報体の墓への転換期に、絶滅した動物たちの墓を建立することが流行した。
中でも人気だったのが、陸上走行型の巨大な鳥の墓で、しばしば柑橘類が供えられた。
その鳥の好物だったのだろう。
このミームがどうやって発生したものかはよく分かっていない。
地球には、まだいくつかの工場群やAI群が残されている。
わずかに残った衛星を通じてアクセスできるため、ハッカー達の格好の遊び場となっているようだ。
彼らの間で流行しているのが、ロボットを現地の材料で組み立てて戦わせ、領地を広げる陣取りゲーム。
圧倒的な強さで活躍しているのが、ダチョウ型の2足高機動ロボットと、それに騎乗したヒューマノイド型ロボット。識別カラーはブルー。
小型核兵器を積極的に使用し、全ての敵を味方ごと炎上させる彼らは、蒼ざめた疫病神と呼ばれ恐れられている。
駝鳥鬼と言うのはこれらの情報群が混ざり、新しく生み出された物語だと考えられる。