9 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/04/30(日) 14:50:14.78 ID:TnsSuj4G0
「兄さんはさ、本当に僕を殺せるって、思っていたの?」
私は洋一を睨みつけた。
思っていたさ。お前の背中にカッターナイフの突き立つ、その姿を何度もイメージしていた。
体はまだ固まったままだ。
「そんなカッターで後ろから僕を刺そうとしても、僕が気付いて少しでも急所からずれたら計画は台無しだよ」
洋一は私を見ている。
「兄さんは決して力の強い方じゃないし、僕が抵抗でもしたどうするつもりだったの?」
そんな事は知らない。私はただ、終わりにしたかったのだ。
このふざけきった日常に、何か変化を与えたかったのだ。
だから───
だから洋一を殺すのか?それで何が変わる?
私への陽を遮るようにそびえ立つその背中を崩し落とせば、私のところに洋一に当たっていた陽がそのまま私を照らすのか?
私は感情に振り回されて、ただそれを撒き散らしたかっただけだ。
私はやはり至らない。何をしても駄目だ。
私は、私は本当に
「馬鹿じゃないよ。優しいんだ」
そう言って洋一は机の方に振り返った。
「コーヒー、僕は好きだよ。丁度欲しかったんだ。ありがとう。おいしいよ、兄さん」
洋一はコーヒーをもう一度啜って見せた。