7 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/04/30(日) 14:48:55.03 ID:TnsSuj4G0
何か言わなければ、何か動かさなければ、何か───。
脳の必死の警告には全身が耳をふさいだ格好で、、
私は目を見開いて洋一から目を逸らさずにいることで必死だった。溜まった唾を飲み込むことさえ出来ない。
「僕は兄さんが離れていくのが怖くてたまらなかった。」
洋一はひどく落ち着いて話す。
刃物を手にして殺気立った私を目の前にしても、彼は呼吸ひとつ崩さず、私の淹れたコーヒーを啜っている。
「何よりも怖かった。どんどん温度を無くしていく兄さんの態度が、蔑むように僕を見るその瞳が。」
洋一は悲しい目をしていた。
それは私が今まで目にしたものの中で最も冷たく、いくら手を伸ばせど届かない遠さにあった。
「そろそろだろうなって、思ってたんだ。だから分かったんだよ。」