5 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/04/30(日) 14:48:03.54 ID:TnsSuj4G0
ゆっくりとドアを引いて洋一の部屋へと入ると、洋一は驚いた顔一つ見せずこちらを振り返った。
「よ、洋一、今朝は悪かったナリね、当職も少し感情的になってたナリ。」
「いやいや、僕も悪かったよ。僕が余計なことしたから」本当に申し訳なさそうに洋一は話す。
「勉強頑張ってるナリね。これは差し入れナリ」怪しまれないように淹れてきたドリップコーヒーを洋一に差し出す。
「…。兄さんは優しいね。ありがとう。」洋一はそれを受け取ると、本場のコーヒーでも飲んでいるかのようにおいしそうに啜る。
「それじゃあ当職はこれで帰るナリ。勉強頑張るナリよ」ありがとう、という声がして、洋一が机に戻る。
ドアまであと少しという所でゆっくりと振り返った。
洋一は先ほどまでと同じように机に向かっている。
あとはその背中に、憎い背中に、カッターナイフを突き立てるだけだ。
駆け出す体勢と呼吸を整え、両手にゆっくりと力を入れる。
そしてイメージする。私が勝つ場面を、そして上からの景色を。
正に駆け出す瞬間に、洋一がもう一度振り返った。
「やっぱり、兄さんは優しいよ。」