13 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/04/30(日) 14:51:56.73 ID:TnsSuj4G0
「死ね」「殺すぞ」「犯罪者」…。
そこには目を覆いたくなるような罵詈雑言が紙一杯にずらりと並んでいた。
「僕には友達が居ないんだ。一緒にご飯を食べたり、トイレに行ったり、そういう人たちは沢山居るんだけどね。」
理解できない。
トモダチガイナイ?
脳の中で音だけが反射して響いている
「これが毎日のように僕の鞄や机の中、ロッカーや靴箱なんかに投げ込まれてるんだ。筆跡は一定じゃない。」
それは想像もしなかった洋一の一面だった。
「何人もの人間がこれをやってるってことさ。」
私はパニックになっていた。
「僕はいつも必死だった。全て繋ぎとめておくのに。自分で言うのもなんだけど、辛い努力をいくらでもしんだ。僕は天才なんかじゃない」
呼吸さえもおぼつかない。胸がきつく締め付けられるのを感じる。
「でもそれは逆効果だったみたいだ。或いはそれは全く関係ないところで問題があったのかもしれないけど…。
とにかく、僕の側にはもう、誰もいないんだ。」
洋一はそんな素振りをひとつも見せた事がなかった。
全てを持っている彼に、私は激しく嫉妬を覚えるばかりだった。
それは彼の拙い演技だったのだ。
私は、それすらも見抜けなかった。
「兄さんだけが味方だった。だけど、その兄さんさえ僕は怒らせてしまった。僕にはもう価値なんてない。」
洋一が手に不気味に光るナイフを持っているのが見えた。
「兄さんの手は汚さない。僕の終わりを兄さんは願った。一瞬でもね。僕はそこで終わりなんだ。最後は自分で責任を持つよ。」
私は、溜まりに溜まった唾をやっとの事で飲み込んだ。