11 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/04/30(日) 14:50:58.44 ID:TnsSuj4G0
「僕は父さんと血が繋がってないんだよ。」
洋一は何を言っているというのだろう。全く笑えない。
ただ洋一は気の利かない冗談を言っている様子ではなかった。
「分かるんだよ。なんとなくだけどね。父さんは僕にどこかよそよそしい。」
そんなはずはない。
そう言ってやりたい。安心させてやりたい。
「だからあの場所は怖かったんだ。最初はね。」
だけど声はまだ、出ない。
「そしてそれは似ているんだ。『他人』が出す雰囲気って、分かるんだよ。嫌という程にね。」
そう言って洋一は机の上に並べられた手紙のようなものを私に見せた。
「僕は勉強のために毎日机に向かっていたんじゃない。これを読んでいたんだ。」
私は二の句を継げないまま、その紙をただ見つめていた。