10 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/04/30(日) 14:50:42.32 ID:TnsSuj4G0
父の田舎で過ごす夏の数日は私の心に安息と癒しを与えてくれた。
祖父や祖母の昔話に耳を傾けたり、新鮮な野菜で彩られた料理に舌鼓を打ったりするのが私のその夏の楽しみだったのだけれど、
一番楽しみはなんといっても親戚の子供たちで行う裏山の探索だった。
新鮮な空気を肺一杯に貯め込んで、私達はそびえ立つ木々の間をずんずん進む。
「貴洋兄ちゃん!これ、どっち進んだ方がいいかな?」
「貴洋兄ちゃん、歩き過ぎて疲れた…。おんぶしてよ!」
私は探検隊の隊長で、みんなの頼れるリーダーだった。
洋一の姿はそこには無かった。
いつも扇風機の前で何かに隠れるように風に当たっていた。
私は本当にもったいない事だと思った。
一度外に出てみれば、風も緑も土も虫も、みんな味方になってくれるのに。
「洋一、行くナリよ!」
洋一は困った顔をしている。
だけどもう決めたのだ。今日はなんとしても連れて行く。
「大丈夫ナリ!当職が付いているナリよ!」