2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/01/09(月) 17:51:45.94 ID:cNTlGSU20
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僕は権力のある人に守ってもらう必要がある。勝手に商売をすると怖い人に目をつけられるからだ。僕の新しい主人になったMさんのことを、次の日大学の喫煙所で会ったYくんに話した。彼は、僕のとった客の話をよく聞きたがる。
「変わった人だな」
僕は友達を必要としない。だから友達はいない。たった一人、Yくんを除いては。僕に言わせてみれば、昨日のMさんと同じくらいYくんも変わっている。
同学年の彼は明るくて誰からも好かれる人気者で、友達も多く先輩と恋仲にあって、既にたくさんのセックスフレンドがいる。それなのに、僕の客商売の噂を知って近づいてきた、本当に変な男の子だ。
二人で初めてホテルに行った夜、Yくんは僕の首を思いきり絞めてきたので、僕は彼に恋をしてしまった。
けれどYくんが僕に振り向いてくれる日は、きっと来ない。セックスのとき「好きだよ」と伝えたら、彼はひどく狼狽した様子で、まだ途中だったのに帰ってしまったことがあった。
僕は自分の好きなところが二つだけある。誰かを心から愛せることと、その誰かが他の人間と寝ていても何とも思わないことだ。
「最近お前のこと見なかったけど商売繁盛してるってこと?」
「そうだね」
「ちゃんと大学は来いよ。留年したらどうすんだ」
「そのために稼いでるんだよ。知らなかったの?」
「ばか」
Yくんは僕を小突いた。そしてじっと僕の目を覗き込んだ。僅かに笑っている。
「なあ……今日の夜空いてる?」
「……空けるよ」
「よかった。そしたらいつものとこで。じゃな」
Yくんは行ってしまった。
働いた後はYくんに会いたくない。Yくんと寝た後は働きたくない。客は暫く取らないことにした。