14 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/01/09(月) 18:48:26.57 ID:w0Fd3AQ40
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Mさんは僕と会うためにレストランを予約してくれた。そのレストランではチェットベイカーが流れていて、甘ったるい歌声にめまいがした。
「それで、きみは誰を殺したいと思うのかね」
僕が答えるとMさんは「やはりね」と微笑んだ。
段取りは全てMさんが組んでくれた。Mさんの所有しているマンションで対象を絞殺。
終わったらすぐに電話。事後処理の手配はMさんが行う。僕の計画の話をしながらMさんはステーキを食べていたが、僕はなにも喉を通らなかった。毎日酒ばかり飲み、死について考えた。
一ヶ月が経ち、「その日」がやってきた。
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前日、Yくんに電話をかけてある。例のMさんの話、と言うと彼は全てを理解したようで、僕は指定されたマンションの場所を伝えた。
部屋に指定された持ち物を全て運び終えて準備が整った後、Yくんがやってきた。彼に会うのは一ヶ月ぶりだから少し緊張した。
「久しぶり。痩せたな」
「そうかな」
酒とつまみしか胃に入れてないからだろう。Yくんは何も変わっていない。ソファに腰掛け煙草に火をつけた彼に僕は言う。
「ここに呼び出して、ロープで絞め殺すことになってる。処理は全部Mさんがやってくれて、僕に犯罪歴は残らない」
「ふーん。じゃあ俺は待ってればいいわけね」
三十分、僕とYくんは煙草を吸ったり、お互いの身体をまさぐりあって過ごした。一時間が過ぎて、退屈を極めたYくんは僕に言う。
「そいつ、いつ来るの?」
「誰?」
「今から殺すやつ」
「……」
「なあ、いつ?」
「もう来てる」
「は?」
「もう来てるよ」
Yくんは目を丸くして僕を見つめ、ゆっくりと、慎重に、言葉を紡いだ。