水蛇 (39)

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13 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/01/09(月) 18:46:57.80 ID:w0Fd3AQ40

「着信もメールもYくんばっかりナリ。きみの今の姿を写真で送ってあげたらどうだろう? びっくりするナリかねぇ」
「嫌だ……お願いします……やめてください……」
「大丈夫ナリ。そんなことはしないナリよ。お兄ちゃんは優しいナリ。その代わり私の足にキスするナリよ。きみが今まで私にしてきたみたいに」
 僕はすぐにKの足にくちづけ、足の指を舐めた。何もかも言うとおりにした。けれどどんなに陰茎や肛門を刺激されても、絶頂することだけは拒否した。
 Yくんのことを考えた。絶対僕のものにならないYくん。友達以上にはなれないYくん。
 僕は性と金を交換する惨めな男娼に過ぎないのに、地面を這いずる蛆虫の分際で月に手を延ばしている。Yくんのことを考えながら僕はまた気絶した。
 数時間後、携帯のバイブレータで目を覚ました。起き上がって携帯を開く。Mさんからの着信だった。
「やあ。久しぶりだね」
「……あ、えっと……」
「どうやら元気では無さそうだね。何かあったのかい」
 電話口から漂う甘い声に、どうにか声を絞り出した。
「僕は、罪を犯したいです」
「罪というと?」
「……人を殺したい」
 わずかな沈黙の後、Mさんは言う。
「そうか。分かった。今度会おう」
 通話終了ボタンを押そうとしたが、そうだ、と聞こえたので僕はまた携帯を耳に当てた。
「言い忘れていたよ。誕生日おめでとう」
 一秒ごとに昨日が遠ざかる。昨日までの自分が消えていく。その晩、久しぶりに蛇の夢を見た。