11 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/01/09(月) 18:11:23.52 ID:sGj02l780
「あいつは孤独なんだ」
「……」
「心の中に絶対に開かない場所を持ってる。お前もそうなんだろ? 可哀想な者同士、傷を舐め合って勝手に破滅すればいい」
先輩は立ち上がり、どこかへ行った。テーブルの上にはぬるくなったコーヒーが二つ残された。
先輩がいなくなったあと、僕は一人になりたかった。誰とも話したくない。俯きながら足を早めキャンパス内の園池に向かった。あそこは緑が綺麗で、いつも誰もいないから静かだ。
「あ」
誰もいないはずの畔りに人影を見る。近寄るとYくんだった。座り込んでいた彼は振り向いて僕を見た後、すぐに視線を戻した。
「……隣いい?」
「うん、いいよ」
Yくんの頬にはガーゼが貼られている。僕はそれをじっと見た。
「これ? 遊びすぎがバレて殴られた。へへ」
「……」
「なんだよ。笑えよ。遅かれ早かれこうなってたんだから」
ふうう、とYくんは長い溜息をつく。
「悲しくないの」
「なに? お前は俺が可哀想か?」
「そんなこと言うつもりじゃ」
「じゃあやらせてよ。慰めてくれよ、この俺を」
僕の肩を掴むYくんの腕を振り払う。
「やめてくれ。それじゃただの最低な奴だ」
「そうだ俺は最低だ。最低のクズ男だぜ。誰彼構わずやりまくっては捨ててんだ。
自分がゲイだって知らなかったときに付き合ってたバカ女、孕んだとか言ってすがりついてきたけど迷わず堕ろせっつったよ! 金なら出すぜって! そしたらあいつ泣きやがった! ……どう? 軽蔑した?」
「しない。それ作り話だろ」
「……お前、マジで嫌だ」
Yくんは涙を溜めている。
「俺がどうしようもないのは本当だよ。俺はあの人にひどいことをした。お前にも」
彼はひざに顔を埋めてしまった。
「もう俺たち会うのやめよう。自分が何考えてるのか、分かんない」
「Yくん」
「一人にしてくれ……お願いだ」
「……わかった」
なぜ上手くいかないのか僕には分からない。なぜ人と関わりたいと強く望みながら、それに傷が伴うのか分からない。Yくんは深く傷ついていた。傷つけたり、傷ついたりするのは、もう嫌だ。