10 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2017/01/09(月) 18:09:18.76 ID:sGj02l780
「俺ね、お前と一緒に卒業して、一緒の院行って、一緒に試験合格して、司法修習も一緒に受けて、いつか一緒の事務所で働けたらいいと思ってる。本当だぜ」
五年後、十年後の彼の未来に僕がいるのに、なぜ恋人としてじゃないのか考え僕は悲しくなる。僕の気持ちを知らないYくんは無邪気に笑った。
「お前来月誕生日だろ。何ほしい?」
きみの恋人になりたい。
「僕……何もいらないや」
「なんでよ? 自分で買えるから? うわあ、やだね、金持ちってやつは」
彼は笑いながら僕を抱きしめてベッドに運んだ。
「Yくん、今の僕に必要なものが分かったよ。コンドームだ」
4
誕生日の前日、突然「話があるんだけど」と僕を呼び止めたのはYくんの「先輩」だった。
キャンパス内のコミュニケーションスペースで僕と向き合った「先輩」と向き合うのは胃が逆流するほど居心地が悪い。
マグカップの中で揺れる液体を眺めていると「先輩」は、
「俺たち別れたんだ。もう知ってるか?」
と言ってコーヒーに口をつけた。
「いえ……」
「じゃあこれは知ってるだろ? あいつが誰とでも寝るの。淫売のお前みたいに」
「いきなり何ですか」
「お前が憎いって話」
顔を上げて先輩を見た。意外と首が細くて、両手で思い切り締めたらポキリと折れてしまうんじゃないだろうか。先輩は淡々と言う。
「俺は、今まであいつが何しようと干渉しなかった。色情狂を好きになった俺が悪いんだからな。でもお前だけは許したくない。お前、あいつとキスしたことある?」
「……はい」
「俺はないよ。笑えるだろ? セックスしてもキスは嫌がるんだ。他の奴はいい。でも、心まで奪ったお前のことは殺したいくらい憎い」
「誤解です。彼は僕のことだってその他大勢と同じで……」
「今見て分かったけどお前らは似てるし、あいつはお前に惹かれてる。分からないのか?」
分からねえよ、クソが。
今すぐこいつの首根っこを掴んで絞め殺してやれたら、どれだけ気持ちいいだろう。僕がどれだけ苦しんでいるか知らないんだ。僕はYくんに好きだと言うことすら許されない。手に入らないものを望んで、もどかしさに狂いそうになる夜を知らない。