1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/11/25(金) 22:59:02 ID:jB8mK3Pk
「食事の時間ですよ」
部屋の外から聞こえた声と鍵を開ける音で私は目を覚ました。
あたりを見回す。狭い部屋。
簡易ベッドが置いてあるだけの部屋。
窓には鉄格子がはめてあって、外をちらっと覗くことしかできない。
扉にはドアノブがない。いや、正確に言えば「内側には」ドアノブがない。
鍵とドアノブは部屋の外側についていて、私は自由に部屋を出ることができない。
ここは、私を監禁するための部屋だ。
鍵を開ける音に続いてギギギと音を立てながら扉が開き小太りの男が部屋に入ってきて、私の手を取る。
「いやっ!触らないでっ!」
男の脂ぎった手の感触が気持ち悪くて、私は思わず叫んでしまった。
男は困ったような顔をしながら、手を掴み私の手錠を外す。
「さあ、食堂にいきましょう」
一体いつからここにいるのか私は忘れてしまった。ここに連れられてきたのは昨日のような気もするし、ずっと遠い昔、それこそ何十年も前のような気もする。
学校が終わり、校門を出て家へと向かったところまでは記憶がある。
しかし、そこからいきなりこの部屋の中へと記憶は飛ぶのだ。
私は15歳の女子中学生だ。あくまでも記憶の上でのことだけれど。
学校を出るときには着ていたはずの制服は気がつくと脱がされ、まるでおばあちゃんが着るようなセンスのない服に変わっていた。
あの小太りの男が私の服を変えたのだろうか。気持ち悪い。
私はずっと部屋に監禁されている。手錠を嵌められ、ベッドから動くこともできない。
トイレにも行かせてもらえず、おむつにしなければならない。日に数回、そのおむつを男が回収しにくるのだ。
お風呂だって毎日入らせてもらえない。それも「一人では心配だから」という理由でお風呂のすぐ外にはあの小太りの男がいる状態で入らなければいけないのだ。
外に出られるのは食事のときだけである。これが私の唯一の楽しみである。
だって、そこには「彼」がいるんだから。
小太りの男のあとについて食堂に入る。テーブルの上には料理が並んでいる。
焼き魚やおひたしである。嫌いではないけれど、私だって若いのだからステーキだとかパスタだとかを食べたい。
はじめの頃は小太りの男にそんな要望を出したこともある。
でも、「体に悪いから」という理由でにべもなく却下されてしまった。
テーブルには小太りの男の他に、もみあげの白い太った老人と、かっこいい男が座っている。
そして、彼こそが私の憧れであり、生きる希望である。
動物でいったらリャマに似ているその男の人はいつだって私に優しくしてくれる。
彼と話すときは私は自分の顔が火照るのを感じてしまう。きっとこれが恋で、そして初恋なんだろう。
私が彼に対して照れたりはにかんだりするのを見て、小太りの男や白もみの老人はなんだか寂しそうな顔をする。
(続く)