1 - 1/8 2016/11/24(木) 16:38:32 ID:/xsj/BnU
森公高は憂鬱であった。
それは会長としての仕事が彼の手に余るとか、彼を上回る実力を持った人物が彼を追い落とそうとしているとか、そのような事が原因ではない。
彼は会長たるに十分な能力を有していたし、彼を上回る程の才能を持った人物はいない。
いや、嘗ては居たのだが既に用水路の底に沈んでいる。
ただ、彼は退屈であった。
そこで彼は多くの若い会計士を探らせた。自らを打倒せんとする気概を持つ者を求めていたのだ。
だが、そのような者はいなかった。故に彼はかつて最大の敵であった唐澤家を探らせようと思い立ったのである。
唐澤洋は彼からすれば家柄だけの凡人ではあったが、洋の息子である厚史は近い将来、森公高に完全なる敗北をもたらすと彼が確信するだけの才能と輝きを持っていた。
彼は厚史の再来を、好敵手の存在を唐澤家に、唐澤貴洋に求めたのである。
彼が今憂鬱であるのは唐澤家の現状を、オラ森とその近辺で日々発生している現象を手下が撮った森けんま動画を介して見てしまったからである。
攻撃材料ばかりだな、とか件の手下には特別手当てをたっぷり出してやろう、などと考えながら彼は動画をもう一度最初から再生することにした。
これは非常に汚く臭く、呆れ果てるような代物ではあったが、少なくとも退屈なものではなかったのだから。