8 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/11/08(火) 04:25:02 ID:YsFwJpeA
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
正月に親族で集まった折、従兄弟の子共からそんなことを聞かれた。唐澤貴洋、というのは僕の同僚の弁護士で、宗教団体の教祖をやっている男だ。肥満体型でちんこの皮が余り過ぎており、核兵器を保有している。趣味はコーランを燃やしつつムハンマドを馬鹿にすること。またしばしば脱糞し、ときどき小児性犯罪に手を染める。こんな風に説明すると大抵の人は信じてくれないのだけれど、唐澤貴洋は実在の人物でした。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
なるほど、子共らしい素直で素朴な疑問だ。けれどもその問いに対する答えを、僕は持ち合わせていない。もちろん一般論として男性は妊娠できないが、その一般論から外れる例外を、ごく身近に知っているからだ。身近、というのは僕にとっても唐澤貴洋にとってもそうで、いや、プライバシーの問題があるから名前は出さないけれど、その男性は多い時には2、3日に一度のペースで懐妊と出産を繰り返している。だから、彼と遺伝的に極めて近い立場にある唐澤貴洋も、ひょっとしたら妊娠できるのかも知れない。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
けれども僕は、その質問に何も答えなかった。考えて答えがでるわけでもないし、とるに足らない下らない話だと思ったからだ。代わりに、というわけではないのだけれど、翌日東京に戻った際に偶然出くわした顔見知りの元東大教授に、同じ問いを繰り出してみた。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
その教授は理系は理系でも専門は工学、しかもコンピュータ関連だったから、医学か生物学に属する問題を投げかけるには不適任だったかも知れない。事実、彼自身も同じことを前置きしながらも、しかし面白い話だと乗ってくれた。カリフォルニア州知事が妊娠する映画を引き合いに出しつつ、自然な状態で男性が妊娠することは不可能だが、将来的に技術が進歩すれば可能になるかも知れない、というのが彼の出した結論だった。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
自宅に帰って熱いシャワーを浴びながら、ふと呟く。考えて答えがでるわけないじゃないか。僕は合理的な人間だ、無駄な思考は排除するべきだ。しかしこの問いは、フランスの国民的炭酸飲料から沸き出す泡のごとく、僕の頭の中をぷちぷちと浸食していく。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
確かに頭の中で理屈を捏ねくり回したところでどうにかなるものではない。ならば調べるまでだ。早速ネットの検索エンジンにこのワードを入力する。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
残念ながら電子の海は僕の疑問には答えてくれなかった。当たり前だ。だって少なくとも僕の知る限り、唐澤貴洋は一度も妊娠していない。ならばどうするべきか。
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
他人である僕ですらここまで心囚われる疑問なのだから、きっと当人にとってはより切実な問題だろう。そういえば明日は唐澤貴洋の誕生日だった。素敵なプレゼントを用意しよう。