15 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/11/08(火) 22:11:10 ID:WMF8lq9I
「唐澤貴洋って妊娠できるの?」
「...?」
シンと冷えた空気の中、寝息だけが響く部屋で同僚が呟いた。
唐澤貴洋はーーーからさんは名前の通り男だ。
男は妊娠できるかと脈柄もなく問う言葉に妙なシュールレアリズムを覚えて笑いが零れる。そんな僕を知ってか知らずか山本は言葉を続ける。
「オメガバースなら男女ともに妊娠できる」
オメガバース...?単語と単語には聞き覚えがあるがその言葉に聞き覚えはない。
が、推測するに英語圏の言葉なのだろう。
彼はセクシュアルやバイオレンスの問題を専門としているからその系統の海外の情報もセンサーを張っている。
ガタリ、おもむろに立ち上がり何をするのかと思いきやーー
伏して寝ているからさんのおむつを脱がし、無遠慮に指を突っ込む。
「い...痛いナリィィィ!!!!」
先程まで夢のうつつだったからさんは唐突に現実に引き戻される。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、痛みに引き攣る顔を見て頭から血が引いていくのを感じた。
止めなくては。思わず声を荒らげる。
「山本くん!からさんが嫌がってる!やめてくれ!」
「唐澤貴洋って妊娠できるの」
サイコパスを思わせる無表情な顔で言葉を継ぐ。
「オメガバースなら男女ともに妊娠できる」
なぜ、彼はそんなことをするのか。
...............
「山本くん...君は僕を試しているんだね?」
1つ心当たりがあった。
それは以前、同性愛を公言している弁護士に話を伺った時だ。
同性愛者、特にゲイの間で妊娠に見立ててHIVを移し合う行為が一種の社会問題になっているという。
正直なところ、僕はその話を聞いた時軽蔑を覚えたんだと思う。
からさんと思い合える、この贅沢な人間関係で僕は満足出来ているのだと、彼らのように不満を覚え危ない行為はしないと。
でも...いずれ、満たされなくなったら?
彼はそれを試しているんだ。
乱暴な愛撫を続ける男を突き飛ばし、睨みつける。
からさんはいきなりされた乱暴に身を震わせていた。
その菊の門から溢れる下し気味のそれは、雨に濡れ土の匂いを漂わす大地に思えた。
ズボンを下ろし、ペニスを一気に突っ込む。もう躊躇いはなかった。
「痛いィナリィ!!」
無心で腰を動かす。
痛みか他の感情でひくつく腸壁は今までにない得も言えない感覚で簡単に達してしまった。
放った精子たちは腸液にやられ、やがて死滅するのだろう。
しかしそんなことは問題ではない。
男女が作る打算と劣情の塊よりも大切なものが僕の心の中には確かにあった。
「山本ォ!...これが僕の答えだ」
山本はいつの間にか立っていて、相も変わらず読めない表情をしていた。