6 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/13(火) 19:23:46 ID:EwHVneTI
瞬時に目を覆えるような判断力は既に私の中から抜け落ちていた。ここに来てからは体感時間は3倍になっているようなのに対して、脳の動きは3分の1程度まで落ち込んでおり、その差は9倍ほどもあった。
目の前の男はこの惨状にも涼しげな顔で、何やら独り言を話し始めた。
「参ったなあもう5回連続でこれだ。やはり父で試すのは無理があったかなあ。まあしかしこれはこれでもうけものだ。何しろほんのちょっとした労働でそれなりの量の食肉が手に入ったわけだ。
こういう時のためにとっておいた分を使って今日の昼飯としましょうか。高度情報社会でシステマナイズされた今の時代、これくらい思考を切り替えないとやっていけませんな、ハッハッハ」
男は床に散らばった肉塊を手で集めて掬い上げると、おもむろに奥の調理場へ向かい、コンロの火を入れ始めた。しばらくバリエーションに富んだ効果音が聞こえると、男は大きめの丼を持って出てきた。
そこには湯気を立てて輝く肉丼があった。出所のわからない白身がかかっていたが、それがなんであるか類推するのは止すことにした。