31 - 続く 2016/09/13(火) 13:05:17 ID:NXbbKDKE
「長谷川君。君はどんな異世界に行きたいナリか?」
4度目の問いを耳にし、思わず自嘲がこぼれる。異世界。これはきっとそういう夢なのだ。
竜や魔法が飛び交う幻想の地? それとも銀河帝国同士が覇権を争う遠い宇宙?
夢の中ならばどこへでも行けるだろう。何でさえも誰でさえも自分の思い通りになるだろう。
そしてその傲慢さが何をもたらした。
ネット上の掲示板ですら、そんな小さな小さな世界ですら満足な人間関係を築けなかった人間が。
自分の思い通りの世界だって? 思い上がりは甚だしい。何も学んでいないのか。長谷川亮太。
それでも。
それでもこれが自分の夢ならば、ほんのささやかな願望一つ、小さな願い一つだけなら。
誰が許すとかじゃない、自分で自分を許せるなら、たった一つの思いだけなら。
「ワイはただ、ワイが炎上していない夢を見たいンゴ」
「●はい。」
手短にそう告げると、先生は顔を90度傾けた。
これは弁護士唐澤貴洋弁護士が本気を出したときのしるしだ。
先生はこうやって幾多の人間と一羽のダチョウを葬り、いくつもの都市を灰に変えた。
いや、これはなんJラー達のネタだったか?
既に意識が混濁してきた。もう何秒かすれば意識を失い倒れるだろう。
次に目を覚ますのはこの世界だろうか。それとも夢の中だろうか。
せめていい夢を。ただそう願って瞳を閉じた。
「長谷川君。君は生まれ変わるナリよ。新しい君に」