1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/06(火) 16:27:39 ID:XVp9U0JE
仕事がない。ここ一年順調に減り続けてきた仕事は、営業の甲斐なく今月に入ってついにゼロになった。このままでは事務所の高額な賃料も払えず、賃金を支給することもできない。どうしたらいい。会計士の洋さんに相談したら「お金あげりゅ! あげりゅよ!」と言ってくれたが、事務所の所長としてこれ以上迷惑をかけるわけにもいかない。
僕がこんなに胃を痛めているというのに、からさんは相変わらずロリドルシコシコ、山本くんなんかはデスクに足を投げ出して雑誌を読んでいる。ヤンキーかな、あれ。
「山本くん、行儀悪いからそれやめて」
「あ、すんません。てか今日も暇っすねー」
「暇だからって事務所で趣味の雑誌読むなよ。なにそれ、カメラ雑誌?」
「趣味じゃないですよ。俺、写真か映画で一発当てるんで」
あのね山本くん、芸術で一発当てられる人間なんてほんの一握りなんだよ。……まじめに言ってもきっと聞いてくれないんだろうから、何も言わずコーヒーを淹れた。
「あっそうだ山岡さん、話変わるんですけど」
山本くんは雑誌を置き、肘をついて僕を見た。
「なに?」
「治験って興味あります?」
治験。医薬品を世に送り出すための臨床実験だ。
「僕の知り合いに薬品研究してるやつがいるんですけど、そいつがちょうどモニターを募集してるんですよ。病院に一泊して、薬飲んで寝て、そのあとレポート書くだけで、ギャラが百万」
「……怪しくないか? 謝礼が高すぎる」
「大丈夫っすよ。ただの眠剤です。てか俺もやったんで。ちょっと悪夢見るくらい? てかその金で眼レフ買ったんですけど見ます?」
「別に見たくないからいいよ……」
普通、治験の謝礼なんて十万かそこらではないのか。いやな予感がする。しかし百万。一晩で百万が手に入るのか。……背に腹は代えられない。僕は金のためなら、なんでもする。
後日、山本くんの知り合いがいるという病院に連れて行かれ、血液の状態や心拍数を測られた。健康と判断された僕は清潔な病室に移され、そこで半減期と、出やすい副作用について説明を受けた。最後に契約書にサインをする。付き添ってくれた山本くんが「ここで寝るだけで百万っすよ。ちょろいでしょ」と笑い、ひらひら手を振って出て行った。与えられた薬を水で飲み、ベッドに横になる。すると、すんなり眠気がやってきた。
2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/06(火) 16:29:49 ID:XVp9U0JE
あれ。今何時だ? 異様な熱感を覚え目を覚ました。身体がだるく、動けない。真っ暗だ。人体実験はもう終わったのか。それにしても暑いな。寝てる間に風邪でもひいたかな。……いや、僕はまだ眠っている。自分の姿を見て、驚愕した。
僕は、もともと着ていた寝巻きを脱がされ、白いコルセットと同じく白いガーターストッキング、ハイヒールを履いた状態で、縄で椅子に固定されていた。縄が上腕部に食い込んで痛い。陰部を覆い隠してくれるものは何もなく、恥ずかしさのあまり一刻も早く眼が覚めることを願った。悪夢を見やすいと山本くんも言っていたが、こんな屈辱的な無意識は耐えられない。あたりは暗く、何も見えなかった。しかし、暗闇から何者かの息遣いを感じる。一人や二人じゃない。目を凝らして暗闇を睨みつける。
突然、背後から手が伸びてきて僕の口元を強く押さえた。手袋でもしているのか真っ黒な指は、僕の粘膜を玩んだ。噛みついてやりたいが身体が弛緩しきっていてままならない。全身が総毛立つ思いだ。黒い手は徐々に増え、全身を蹂躙し始めた。首筋や背中を指でなぞられ、乳首をこねまわされ、太ももを撫でられ、身体がざわつく。性的な痺れが駆け抜ける感じが気持ちが悪い。黒い手はついに陰部にたどり着き、ゆっくりとそれをしごいた。
「う……」
指の突っ込まれた唇のすきまから呻き声が漏れる。誰かの人差し指が鈴口をつつき、とっさに腰を引いた。抵抗なんて無意味かもしれないが。
歯を食いしばり、無意識の拷問に耐えていると、ふっと手の感覚が消えた。僕を縛っていた縄がほどかれ、床に倒れこむ。……よかった、もう終わりだ。すぐに目は覚めるだろう。深くため息をついて、床の心地いい冷たさを味わった。ねっとりと湿った、熱い舌が背中を這うまでは。
「ひっ!」
小さく叫んでしまう。相変わらず何も見えないのに、確実に何かがいる。暗闇の中でうごめく何かは僕の身体を舐めまわした。一体なんだっていうんだ。僕はこんな人間なのか。潜在的に被虐願望を持つ変態だったっていうのか。もういやだ、助けてくれ……なにかが身体を這いずるたびに意識が遠のき、電流が走る。もう、とろけてしまいそうだ。身を任せた方が楽かもしれない。どうせこれは夢だ。ここは僕の夢だから、どんなに叫んでも助けは来ない。誰に見られているわけでもない。だったら、楽しんだ方がいい。
舌が陰茎を這った。生ぬるい快楽がせりあがってきた。とろりとした唾液に包まれ気持ちがいい。思考が失われていく。僕はなすがままのおもちゃだ。本来、なにかを受け入れる場所でない菊座を容赦なく解され、肉棒で貫かれた瞬間僕は絶頂した。理解の及ばない状況下で集団に身体を求められて全身をザーメンまみれにされる。暗闇から「オナニーしろ」と声が聞こえてきて、言われるがまま僕は自らを慰めた。きちんと射精できると、またご褒美がもらえるから。
3 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/06(火) 16:32:10 ID:XVp9U0JE
はっと目を覚ました。白い天井。消毒液の匂い。ここは病院だ。眠る前の記憶を辿る。そういえばぼくは、新薬の実験のためにここに来ていたのだった。
それにしても最低な夢を見た。提出を求められたレポートには、入眠はスムーズ、中途覚醒もなし、だが悪夢がひどい、といったような内容を書いて渡した。
あの悪夢から一週間が過ぎたころ、山本くんがうきうきとしながら僕に話しかけてきた。
「やばいっすやばいっす、俺こないだカメラの話したじゃないですか、一発当てるって」
「そうだっけ」
「はい! で、こないだ映像撮ったんですよ。それを十枚くらいディスクに焼いたら一枚十万で売れたんですよ! これから追加で焼いて売りさばく予定です。売上は全部事務所に収めるんで、しばらくは安泰っすよ!」
「へえ、すごいじゃないか」
本当は弁護士本来の仕事を取ってきてほしいんだけどね。
「全部山岡さんのおかげですよ」
「ん? 僕は何もしてないよ」
「いやいや、してくれたじゃないですか」
「何を?」
「新薬の実験」
4 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/06(火) 17:20:14 ID:Mx.Ie702
ラストのオチ方がいい
次の瞬間の山岡を想像したら笑いが止まらなくなった
5 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/06(火) 19:15:51 ID:yIiFpuVU
ラストでニヤニヤしちゃう
10 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/07(水) 02:32:27 ID:0PH0qT2w
山本に弱み握られて肉便器ルートやろなぁ…
12 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/07(水) 14:33:50 ID:dvftWXPE
山本のヤンキー+ゲスキャラが定着してきたな
15 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/07(水) 18:19:24 ID:HLIES1iE
チャラ男&ゲスの山本が参画したおかげで物語のバラエティが急速に広がってる
これはいい。
16 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/07(水) 21:47:46 ID:EjGL1EMI
やっぱキャラクターにバリエーションあると書きやすくなるもんやな
19 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/29(木) 00:51:59 ID:JCENpt5U
変態やんけ!