3 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/05(月) 17:39:21 ID:dJ3fIupg
「胃は簡単に取れたけれど、大腸小腸はまるで加工前のソーセージだったな。いやまいったよ。盲腸も切り取ったほうがいいかな。山本くん、からさんが心拍数が下がってる。血液が足りない。山本君、洋さんの採血量を増やしてくれ。」
「山岡さん。」
「お、肝臓はやはり腫れているな、色も悪い。切り取ったほうがいいだろう。山本くん、この血管の端を持って。」
「山岡さん、こんなことして、大丈夫なんですか」
「なに、からさんのことだ。内臓の一つ二つとったところで何ともないよ。ちゃんと代わりに詰めるものは考えてあるさ。」
「血がでりゅ!でりゅよ!。」
麻酔のかかった唐澤の口からは、「ゴボウゴボウ」としゃっくりとも呻きとも聞こえる音が流れている。ベッドの上で裸どころか内臓を露出し、それらを摘出されている唐澤は、目の前のスマートフォンを凝視していた。彼の眼には彼が学生時代に何度もみた映画のラストシーンが写しだされていた。
山岡は唐澤のなくなった内臓の代わりに、事務所の金庫の奥にしまっていた超小型の核融合炉を詰め込んだ。幸い施術は上手くいったようで、麻酔が切れて目覚めた唐澤は、開口一番
「アイスが食べたナリ!」と言った。
「からさんよかった。ほら、アイスです。これを食べたら裁判に行きましょう!」
「はいナリ」
機嫌の良い唐澤の返事に、悲願がかなった山岡は涙した。やっと行けるのだ。裁判所へ。
しかし山岡が渡したアイスが刺激となり唐澤の体内の炉が核分裂を起こした。臨界を迎えた彼の体は閃光に包まれた。地球は瞬く間に核の炎に包まれ、世界の終わりが訪れた。
(裁判に行きたくないからお腹が痛いと言い訳して欠席しよう。)
唐澤が企んだ最初の試みは成功した。仮病を使ってでも行きたくなかった本日の裁判は、もう二度と行われることはなくなったのだから。