問題裁判 (11)

←← 掲示板一覧に戻る ← スレッド一覧に戻る

1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/09/05(月) 17:18:37 ID:dJ3fIupg

 無能ボイスが、オランダヒルズ七階法律事務所クロスの室内に何度も響き渡った。
「お腹痛いから裁判いかないなりぃ!!!!」
 それが大声を出している奴の主張だった。37歳の男性にしてはあまりに幼稚すぎる主張。
「いかないなりぃ!いかないなりぃ!いかないなりぃ!」
 唐澤は事務所の床にごろりと寝そべり、手足を無軌道に振り回していた。彼のそばに立っている、スーツ姿の長身の男はちいさくため息をつく。からさんの腹痛を治すにはどうすればいいのだ。
 仕事の肩代わりはいわずもがな、アイスが食べたい。脱糞したい。幼女が欲しい。山岡は唐澤のそのような生理的欲求に可能な限り対応してきた。しかし、腹痛は個人では解決できない問題だ。先刻、山岡はかかりつけの医者を呼び、唐澤の腹具合を診断させた。特に何も異常はないと医者は言った。おそらく神経性のものでしょう。いい加減な診断を下した藪医者に対し山岡は殴りかかってしまいたい衝動にさいなまれた。彼は唐澤に気休め程度に処方された抗生物質をオブラードに包み、子供用シロップで飲ませた。
 今日の裁判は、絶対に出廷してもらう。
過去何度も欠席し教徒と呼ばれるネット民に馬鹿にされた去年の裁判。前回と前々回、からさんをなだめすかしアイスを与え己のケツも貸しようやく出廷してくれた裁判。今回も必ず出てもらわなければ。
 からさんはネットの悪意に対し姿を隠し怯える人間であってはならない。実際にそうなのだ。からさんは弁護士として裁判所に赴くことにためらいを覚える必要などなにもない。弁護士が行う、ごく当たり前の責務として裁判所で堂々としていればいい話。出廷拒否などいわずもがな。山岡が深く畏敬する唐澤弁護士の威厳を教徒と言われる奴らに示さなければならない。