みにくいアヒル口の子 (23)

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5 - 5/5 終わり 2016/09/01(木) 19:06:29 ID:JvuyoC06

濁った濁流の中、様々な場面がATSUSHIの目の前に広がります。
不良のアホウドリ達。怖かったけれど時々優しかった。
一緒に修行をしたオウム達。苦楽を共に分かち合った。
ハッカーのサギ達。若いのにその行動力に驚かされた。
イジメっ子のお兄さん。よく脱糞していた。
アヒル口のお父さん。自分せいで苦しめてしまった。ごめんなさい。
卵の中にいた頃。どんなだっただろう、思い出せない……

ATSUSHIがみたび目を覚ますと、そこは一面ワルナスビの花に覆われたお花畑でした。
きっとここは卵の中なのだろう。ATSUSHIはそう思いました。

見渡す限り広がる白い花の地平線の向こうから、黒い影の一団がやってきます。
それはATSUSHIのそばまで来ると、傷だらけのアヒル口の子共に語りかけました。

「نحن النعام」
「دعونا نعود إلى الوطن معنا」

ATSUSHIはアラビア語がわからなかったので、彼らが何を言っているのか理解できませんでした。
でも彼らの姿、黒い羽毛に覆われた大きな体、スラりと伸びた足、長い首の上に座る可愛らしい小さな頭、
ATSUSHIにそっくりの姿を見ると、彼らと一緒ならば大丈夫なんじゃないかと、
根拠はないけれど、そう思えてきました。

いつの間にか傷も癒えていたATSUSHIは、よく似た姿の一団を追って走り出します。
見渡す限り広がる、ワルナスビの白い花の地平線の向こうへと。

こうしてみにくいアヒル口の子共は、遠い遠い大地へと旅立っていったのでした。
もう誰も傷つけなくてもいい、人が人に優しい世界に。