みにくいアヒル口の子 (23)

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4 - 4/5 2016/09/01(木) 19:04:03 ID:JvuyoC06

車から飛び降りたせいで傷を負い、倒れてしまったATSUSHI。
朦朧とした意識の中、たくさんの声が聞こえてきます。

「なんやこいつ、死んどるんか」
「ち~ん(笑)」
「33-4」
「なんでや!阪神関係ないやろ!」

やっとの思いでATSUSHIが身を起こすと、
荒くれ者のアホウドリ達に取り囲まれているではありませんか。
ATSUSHIは死を覚悟しました。このまま不良アホウドリ達に殺されてしまうのだと。
しかしアホウドリは手を出さず、こう語りかけてきます。

「なんやボロボロやなワレ。
 ワイらの手下になるなら助けてやってもええんやで」

こうしてATSUSHIはアホウドリの手下になりました。
ATSUSHIと不良アホウドリ達は、お墓にスプレーで落書きしたり、
日本一有名な個人宅に自作の表札を貼り付けたり、
自動車を汚してディルドを取り付けた挙げ句ナンバープレート切り刻んでコミケで販売したりしました。

ATSUSHIは本当は、もう誰かを傷つけるのは嫌でした。
ですが逆らえば殺されてしまうかもしれないし、何よりオウムが自分を追っているかもしれない。
人殺しさえ厭わない彼らから身を守るためには、荒くれ者のアホウドリ達に身を寄せるしかない。
そう思いました。そう思うことで自分を納得させようとしました。
それでも時々アホウドリ達に、もうこんなことはやめようと言うのですが、

「俺は嫌な思いしてないから」

と返ってくるだけでした。

ある時ATSUSHIはアホウドリ達から、パーティ券を売ってくるように命令されました。
パーティ券の販売とは聞こえがいいですが、実際はカツアゲと同じです。
結局ATSUSHIはパーティ券を一枚も売らずに戻ってきました。

もちろんアホウドリ達は激怒しました。仲間を集めてATSUSHIに制裁を加えます。

「アタマわいとるんか! アホ、ボケ!」
「おまえ何様?って感じ」
「来春までに死んでくれ」

気がつくとATSUSHIはまた、多摩川の河川敷に満身創痍で倒れていました。
誰かを傷つけずに生きていくのは、こんなにも難しいことなのだろうか。
そんな思いが頭をよぎるとともに、もうどこにも自分の居場所なんてないんだ、
という諦観めいた信念が沸々と黒く沸き上がります。
ATSUSHIは多摩川に足を一歩踏み入れました。