1 - 1/5 2016/09/01(木) 18:57:32 ID:JvuyoC06
昔々、あるところ(知恵を付けることになるので、どことは言わない)で
アヒル口のお父さんが自分で産んだ卵を大事に大事に暖めていました。
やがて卵は臥薪嘗胆の日々を経て、孵化。
一羽また一羽と可愛らしい赤ちゃんが産まれます。
ところが最後に産まれた雛だけが、他の赤ちゃんとは随分違っています。
茶色と黒のまだら模様がまじった羽毛。体も他より一回り大きめです。
これを見たお母さんは、自分が父親譲りの厳めしい顔をしていることも忘れて言いました。
「まあ、なんてみにくい子共なのかしら!」
アヒル口のお父さんは、これはいけない、とお母さんをたしなめようとしましたが、
「どうせあなたがキミタカさんと浮気したときにできた子共でしょう!」
と返されては返す言葉もありません。
アヒル口のお父さんはでりゅでりゅと声なき声をあげて泣くしかありませんでした。
みにくい子共はATSUSHIと名付けられ、しばらくの間、親の庇護のもと甘やかされ育ちました。
ですが時がたつにつれ、他の子共たちとの違いが目立ってきます。
やがてATSUSHIはお兄さんからイジメられるようになりました。
「当職の弟が当職とは違ってみにくい姿であるなどという
当職のアイデンティティを否定する存在でした」
かかる言説に対し、アヒル口のお父さんはATSUSHIをかばおうとしましたが、
そのたびにお母さんからキミタカさんとの不倫をなじられる始末。
しまいにはアヒル口のお父さんも
「家からでりゅ!でりゅよ!」
と、泣きながらATSUSHIを追い出してしまいました。
愛しい息子よりも、自分の家庭内での立場を優先せざるをえない
という無念さがその涙をには見えました。