2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/08/24(水) 21:24:33 ID:HHaSA/W2
「うーん…これは大変なことになったなあ…」
『松本智津夫死刑囚 脱獄』
そう書かれた新聞をしばらく見つめていた山岡であったが、唐澤の声に気を取られた。
「山岡くん、山岡くん、今何時ナリか」
腕時計をしていない彼は山岡に腕をまくらせる。
「2時40分ですね。そろそろ行きましょうか。」
「●はい。」
法律事務所クロスは本来依頼者から尋ねるのが常であり、呼び出しを食らうと唐澤は嫌な顔をする。不平不満ももらす。
しかし、今回ばかりは流石に彼もそういうわけにはいかないようだ。
当然だろう。長谷川からの2度目の依頼なら。不満も大きいが、申し訳なさが先立つ。そう考えること自体何だか不謹慎な気もする。
ところが、30分も待たされると流石に不満も漏れるだろう。いつもは叱る山岡すら耐えられなくなってきた。
「一体どうしたんでしょう長谷川くんは。遅刻…にしては変な気もしますが。」
「知りません。もう知ったことか。当職はもう出て行くナリよ。遅れてきたチンフェが悪いナリ。」
「いや、それは……あーあー。ちょっと待ってくださいよ…」
唐澤は待ち合わせの喫茶店から出て行ってしまった。山岡はとりあえず料金を払い、唐澤を追いかける。
こうやってまっすぐ帰ってしまうから、全くうちの唐さんは…と言おうとしたが、結局山岡は言わなかった。
すぐに見つけたからである。道で立ち止まる唐澤を。
「あれ、唐さんどうしたんですか。戻りましょうよ…」
言った後に気付く。唐澤は何者かと対峙している。
「あれ?唐さん、その方は?」
紫のポンチョ。伸びきった髭、髪……
「あ、麻原彰晃?!」