1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2016/08/19(金) 12:56:31 ID:2xC67qxw
初めは「〇〇動物園の動物全てを見てこい」だった。
当職にそんな暇はなかった。学生の頃は受験勉強・課題に1日の殆どを費やし、しかしそれを『将来楽をするために』と思い苦にしなかった。
が、1度だけ家族全員で動物園を訪れる機会があり、当職は気が向いたので動物をできるだけ見て回った。
しかしダチョウだけを、そのままの意味で見損なってしまった。途中で雨が降り、帰ることになったのだ。
その年 弟は殺された
腕には血で固められた羽毛がビッシリ付けられ、首は脊椎を残して切断、そのまま頭をろくろ首のように長く伸ばされていた。
足も膝の関節が逆方向に曲げられていて、後にその写真を見た時は生理的嫌悪感で胃から昼食がこんにちわした。
どうして、誰がこんなことを
警察は猟奇殺人事件として世間には公開せずかなりの捜査をしたが、犯人は今でも見つかっていない。手がかりすらも。
二回目は「花火をあげろ」だった。
しかし、司法試験を前に臥薪嘗胆していた当職は一回目の時とは提灯に釣鐘、本当に暇なんてなかった。
1度だけ、親戚に海で遊ぼうと誘いを受けたが当然断った。
それから数年して当職はネットでの大炎上にまきこまれた。本当に運が無かった。これから弁護士として経験を積んでいこうと事務所を構え怠慢していた時に。
確かに当職にも非はある。だが殺害予告や事務所の爆破予告なんて犯罪、それらが許され無法地帯と化している今のネットは異常だ。
三回目、つい今しがたの事である。
例の手紙が届いた。
折り目のひとつもないキレイな封筒に入っている。が、一般的な封筒とは違い文字は白、封筒は黒というモノクロ仕様で不気味さをどことなく醸し出していた。
差出人不明の手紙をなぜセキュリティが通したのか謎だが。
鈍い当職の頭にも、ある推測が頭を過ぎる。
《この手紙、つまり『夏休みの宿題』をこなさないと今までのような残酷な罰があるのではないか?》
弟の死に様は明らかにダチョウを模したものだった。
二回目の花火も当職があの少年によりネット花火として打上げられたと考えれば多少納得する。
やらなかった事に対応した罰。
かなりSFめいた妄想かもしれないが、現実に起こっている事は確かなのだ。
今回こそ手紙の『夏休みの宿題』をこなして不幸を避けよう、弟の無念の仇をには討とう。
意気込んで手紙の封を破ると、見覚えのある1枚の紙が現れた。無機質に1文だけ載せられているがその冷酷さには似つかわしくない内容に身が震える。
【バーベキューパーティをしろ】
バーベキュー。下々の民が行う肉焼き祭り。
実際にやったことはないが、当職にかかれば朝飯前だろう。
幸か不幸か、炎上のせいで仕事も勉強もなく、暇は持て余すほどにある。
過去の例を思えばおそらく『夏休みの宿題』を達成するチャンスはどこからかやってくるだろう。
これまでのように失敗する要素は少ない。
なぜ私がこの手紙の標的になってしまったか、誰が手紙を出しているのか、どうやって当職や当職の身の周りの人物に罰を与えているのか等疑問は積もっているが、誰も答えてくれないだろう。