1 - 1 (拙作に特定の思想を揶揄する意図は御座いません。悪しからず。) 2016/08/17(水) 00:01:33 ID:WCkhRTug
ここはとある有名喫茶店。透明な硝子張りの隔壁とノーベル文学賞候補の気配で構成された店内は否応なく瀟洒な雰囲気を有している。
余裕がある空間にも関わらず絶え間なく往来する人々を見るに経営的にも盛況を極めているようだ。
連なる木製の席に、この場には到底そぐわない造形の男が二人。互いに差し向かうような形で腰を落ち着かせていた。
片ややや痩せぎすの男。片や背丈があり肉付きも良い男。共通点として二人はアキバ系の面差しを持っていた。
「そろそろ脱糞政権倒したくなってきたな……」
「わかる。例のアレ、やっちゃいます?」
注文したキャラメルフラペチーノを飲み干すと、徐に高価な耳栓を外し大男が呟く。聞くや否や大男は首肯した。
「やっちゃいましょうか」
二人は同じ思想を胸に抱き、同じ学府の門を叩いた同士。故に片方の怒りや不満は二人の悲憤であった。
最早、かの悪政を看過する訳にはいかぬ。これからは若き者が新しい為政を敷くが然り。
今日はその道筋を立てるべくを密会を開いたというわけだ。
さあ、共唱しよう革命の合言葉を。
「妥当、あ────」
「相席するナリ」
そこまで出掛かった言葉を思わず吞み込む。
店の雰囲気に似合う柔らかな照明の光が遮られ、雑然とした卓上に新参のトレイが音を立てて置かれた。
唐突に彼らの席に闖入したのは恰幅のよいソフトモヒカン。室内であるにも関わらず肩で息をしており、その都度豊かな双丘が服越しに揺れる。
「あ、あの」
「心配いらないナリ。ここなら同僚の目も届かないナリ。うるさいんだよねあいつ」
「はぁ……?」
噛み合わない会話に困惑するが、それは置いといて、なんて蠱惑的な肢体と仕草だろう。名誉の為にどちらとは言わんが胸が異様に高まった。情欲が募る。
ゴクリ、と生唾を呑む音が響いた。
「…………ナリ」
「ど、どうかされましたか?」
ただデブモヒカンがその劣情の主から僅かに後ずさったのは事実。まるで臍下のあたりを本能的に遠ざけるように。
程なくして闖入者も購入分の品を平らげると、そのまま瞼を固く閉じて鼾をかき始めた。
最初の退避以外は同席する男たちには一顧だにせず、アボカドとサーモンのサンドイッチを貪る様はさながら豚。
「ねむった……のか?」
「どうする?一度帰るか?」
「まさか。喫茶店はその高いコストの代償に長々と居座ることができるのが利点だよ。このまま引き上げれば赤字だ」
こうして妙な沈黙は幕を引き、二人はこの国を救う壮大な計画、それに係る密談を仕切り直す。
有意義な時間だと口を開く度に実感が湧き上がる。自動販売機のデザイン改善案。母校の文化祭のアイドルプロデュース。センセーションなる提案の応酬を二人は心の底から楽しんでいた。自己承認欲求が満たされていく、自然と股間も膨張する。
だがこれは準備運動に過ぎない。男汁の放射も累計4回目に差し掛かると、絶頂の余り身体を弓なりに反る大男へ痩躯が切り出す。
「政治、弄るぞ」