3 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/08/14(日) 02:21:40 ID:F7guqU62
「お前は島の中央の大農家達の果物を見て、そんなことを行ったのか?」
「確かに彼らの果物はかわいそうじゃない。悲鳴もあげないしね。だけどそれは、良い土地を一人占めにしてるからだ。先に来たというだけで、俺たちに豊かな土地を分け与えない。」
もちろん、ただの言い訳だろう。もし彼らが良い土地を貰ったとしても、多分彼らは悲鳴をあげる果実ばかり作るだろうから。
でも僕は少しだけ、一理あると思ってしまったんだ。
だから言ってやった。
「君達の言うことも一理ある。手伝ってあげるから、一緒に中央の人達に抗議しにいかないか?」ってね。(我ながら勇気のある提案をしたと思うよ。)
しかし彼らは乗り気じゃなかった。
だだをこねて、行くことを避けた。面倒くさいのか、中央の人の言いなりになっているのか、怖いのかはわからなかった。
この島には"抗議の道"と呼ばれる、大昔に作られた、周辺部から中央に真っ直ぐ伸びる道路があったらしい。
しかし牙を折られた周辺部に住む農民達は、人口が増えたのにも関わらず誰もその道を通って抗議しに行こうとはしなかったようだ。
「もうずっと使われてないよ。」と若い農民は言っていた。
僕は何となくむかっ腹が立ってきて、その道を通って一人で抗議に行ってやろうと思った。
でも、いざ”抗議の道”を目の前にして、僕は愕然としたよ。
一目でずっと使われてないってことがわかった。埃が溜まった道なんて初めて見たよ。
その時気付いたんだ。この島には雨が降ったことがないってことに。
そう、雨。埃やら汚れやらを、自ずから浄化してくれる作用を持つ、雨。
ほとんど誰も見たことがない、このいびつで不思議な島には、雨が一度も降ったことがなかったんだね。