「ロイヤー旅行記」 (25)

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2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/08/14(日) 02:18:18 ID:F7guqU62

いや、本当に喋るんだ。農作物だけじゃなくって、種だって言葉を発する。

僕がとりあえず生活の拠点としたのは、島の端っこでね。そこにある狭い農場では、若い人達がそれぞれ果物を作っていたんだけど。とっても酷い有り様なんだ、これが。
なにがひどいって?

それはね、果物達があげる悲鳴がかわいそうで、見てられないんだ。そんな哀れな声をあげる果物達から、農家達は容赦なく金を搾り取る。(何処かに輸出してるのかな。結構儲かるみたいだ。)
悲鳴をあげてる果物達だけど、彼らも種の時はちょっと幸せそうなんだ。期待と不安が入り混じった、そんな感じのことを喋っているのを僕は聞いた。
しかし、彼らは雑に撒かれると…ずーーっと待たされた挙句、歪な形の芽を生やして、醜い果実に育っていく。そのあまりの酷さに嘆く果物ったら、もうないね。
たまに綺麗な果物もいるんだけどね。そういう果物も、歪んだ作物と一緒に金になっていく。
(ところがね、島の中央にいる、大農家達は違うんだ。作り方が違うのかな。種から作物まで、みんな幸せそうだ。皆一様に綺麗な作物で、高い値が付くのも納得だ。)

さて、島の周辺部で雑な作業を見ていた僕だけど、農家のあまりの酷さについつい口を出してしまった。
「いくら何でも酷すぎないか。まず、果物達がかわいそうじゃないか」とね。
そうしたら、若い農家達はこんな風に返してきた。
「果物の悲鳴は聞こえないふりをしている。そもそも、高い値段が付くからそれでいいじゃないか。俺は嫌な思いしてないから。」
呆れた返答だ。だけど、二個目の返答には僕も思わず唸ってしまった。