「粘土でできた人形」 (26)

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5 - おわり 2016/08/11(木) 21:35:30 ID:4El3D8uc

しかし解決には至らず、また、貴重なデータもとれた。代金は結構です、との言葉を残して、青年は何処かへ行ってしまった。呪術師でも出張営業はあるらしい。
結局彼の手元に残ったのは、謝礼とお詫びとして渡された10体の人形だけ。これでなんとかしろということか。

最初唐澤は人形にひたすら罵声を浴びせていた。
だが、しばらくすると意味のないことに気付いた。連中は避けて通ってくるし、何よりも近い未来分の誹謗中傷しか防げないのだ。毎日罵声を浴びせるわけにもいかない。
だから今度は、根本からの解決を試みた。ネット”炎上”、というのである。人形を燃やせば、脱することができるのではないか。これは大炎上である、と彼は自覚していたので、10体一気に燃やしてしまった。
しかし、ダメだったようだ。ガーズー族とやらは、きっとパソコンに触れたことがないのだろう。

翌日、唐澤は火災報知器の音で目を覚ました。同じく目を覚ました老いた父と共に慌てふためいていたが、単に小規模な火が出ただけらしい。
「こんなこと初めてじゃよ。なんにせよ、単なるボヤで良かった。こんな都会のこんな高級ビルで、火災などあってたまるものか。」


しばらくして、唐澤はぞっとした。
初めてではない。11回目である。