十日間の神さま (17)

←← 掲示板一覧に戻る ← スレッド一覧に戻る

6 - 終 2016/07/29(金) 00:54:11 ID:5dYV/pNE



ビデオテープの並んだ部屋で、今回もカメラを回した。心を砕かれたその男は、じっとカメラのレンズを見つめている。刺激の少なすぎる部屋で彼は三日目から解離性健忘が発現、四日目から幼児退行が顕著に、七日目には妄想と現実の境目が曖昧になり、幻覚と触れ合って幻聴と会話していた。
たったの十日で彼は現実を完全に捨て去った。今は自分を虫だと信じ込み、空想の世界で幸せに生きている。カチ、カチ、カチ、と時計の音が響く。

あなたの名前は?
「えっと……わかりません」
何故わからないのですか?
「……その、ぼくは、むしだからです」
今なにを考えていますか?
「……とけいの音が、うるさいです」
あなたの罪とはなんですか?
「ひとを……ころしました」
なぜ?
「……そしたら、すてないでもらえるとおもったからです」
私のことはわかりますか?
「はい」
私は誰ですか?
「ぼくの神さま」