5 - 5/5 (sage) 2016/06/20(月) 05:37:37 ID:0dgomoPw
Tはスネを勢い良く引きちぎり咀嚼する。
Hのスネを味わいながら、オヤノスネカジリムシになった気分を反芻し、何故親のスネをかじるのか、その理由を探していた。
まず食べ物として考えると、お世辞にも良いとは言えない。
鉄と腐った油脂が入り混じったような味がするし、食感も固い骨とスネ毛が混じり、口内には不快感だけが残る。
きっとオヤノスネカジリムシは食事のためにスネをかじっているのではないのだろう。
では、親のスネをかじる理由とは何だろうか。
その答えは、Tにはもうわかっていた。
彼がHのスネをかじっている時、世界に存在したのは親のスネと自分だけだった。
“自分の存在を証明しろ“と言われてもそれは存外難しいもので、主観で得た感覚が客観的に真実なのかを確かめることが出来ない。
だが親のスネをかじっている時、確かな“自分の存在”を感じることができた。
それは理屈ではなく、自分という存在全てで感じ取ったのだ。
つまりこの世界で自分の存在を確立し、“生きている”ということを自覚することが親のスネをかじる目的なのだろう。
オヤノスネカジリムシは人々が思う以上に高度な生物なのかもしれない。
Tはそう結論付けながら、糞尿を垂れ流しながら横たわるHの血で滴る左足を見て、静かに微笑んだ。