1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/06/12(日) 14:39:36 ID:ptAkws4c
兄さん、と呼ぶ声で目が覚めた。
暗闇の中から浮かび上がってきた顔。
忘れるはずもない、大事な弟。
「アツシ…どうしたナリ…」
寂しげな笑みを浮かべたアツシを見ると辛くなる。
16歳にして命を落とした弟は昔のままで、自分は昔のように何もできないままなのだ。
分かっている。
アツシが姿を見せる。
夢に出てくるということは。
「兄さん、お願いがあるんだ」
「…」
「墓を、僕のお墓を…」
そんなこといっても。
「アツシ、聞いてくれナリ。もうアツシのお墓は無いナリよ。アツシのお墓は…ダチョウのATSUSHIのお墓は…ごんたにとられてしまったナリ…」
それは知ってるよ、とアツシ。
前に現れたときに確かに話した気がする。
その時は、お墓を作ってくれてありがとうと言っていたような…。
「兄さん、聞いて欲しい」
アツシが神妙な顔で切り出す。
「兄さんにお墓を作って貰った後…それは確かにペット用のお墓だったけど…とても嬉しかった。沢山の人がお墓参りに来てくれたから…」
寂しげな笑顔。
「死んでから、いや生まれてからずっと。孤独だった僕にはたまらないほどの幸せだった」
「アツシ…」
「だからね、兄さん。頼みがあるんだ」