ノック (12)

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1 - 1 (sage) 2016/04/22(金) 15:08:08 ID:nB.kSfOY

コンコン…
硬いものがぶつかる音がする
コンコン…
リズム良く音が続く。
その日長谷川亮太はその奇妙な音に安眠を妨げられた。
「何ンゴ、こんな夜中に」
コンコン…
音は断続的に、そして一定の法則を持って発せられている。どうやら玄関に何かが当たっている音らしかった。
「住所がばれてから数日、ホモサイトに住所を書き込まれるなどの嫌がらせなどをされたが、とうとう直接乗り込ん

で来たンゴか」
卒業証書セルフ開示から数日、自分の住所を卑猥な名前と共にいたるところで晒されていた長谷川亮太はフラストレ

ーションが溜まっていた。
そこで真夜中の訪問者に対して少し脅かしてやろうとモデルガンを手に音を立てないように階段を降りてゆく。
「なめんじゃねーぞクソガキ、これでなんJのバカ共も懲りるやろ」矮小なことを考えながら玄関へと近づく。ドアに

はめ込まれたすりガラスに黒い影がぼんやりと映っている。一人で来るとはバカな奴や…そうひとりごちながらドア

スコープを覗き込んだ。
瞬間恐怖のあまりのけぞったがなんとか悲鳴を上げる事だけはこらえることができた。
黒、真っ黒、完全に黒い人の形をしたものがそこにいた。
「なななんやアレ…完全にヤバイ奴やんけ…」コンコン…長谷川亮太は今度は沈黙を守ることはできなかった。
眠たげな目を擦りながら父満孝が玄関へ来た。「うるさいぞ亮太、今何時だと思ってんだ」「ワイの住所見てヤバイ

奴が来たンゴ!警察よぶンゴ!」満孝はドアスコープを覗く。そこには何もいなかった「誰もいないぞ」「そんなは

ずないンゴ!どっかに隠れてるに違いないンゴ!」息子の必死な言動に一応ドアを開け周りを探したが何も、誰も見

つからなかった。「なんJの奴ら絶対この辺にいるんや!町中の奴らに探してもらうで!リンチにしたるンゴ!」「あ

のなぁ亮太…」満孝は愚息を睨み付けながら言った。
「近所の事を考えろ。お前の妄想に付き合うほど周りは暇じゃないんだ。自分のせいでこうなったんだろ」「でも…

」「いいか、誰のせいでこんなことになったか考えろ。それにその手の奴らがもしいたとしても無視しとけばあきら

める、さっさと寝ろ」そう吐き捨てると満孝は寝室へと戻っていった。