5 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/04/09(土) 10:07:05 ID:XTX.YoHw
そのあとすぐ、僕らはオランダヒルズへ引っ越した。
虎ノ門から持っていかねばならない荷物は拍子抜けするほど少なかったが、絶対に忘れてはいけないものもあった。
当然ながらココアを作るためには洋さん ―― だったもの ―― が不可欠だった。不思議なことに、洋さんの全身、脂肪やキチン質などの諸構成物はすべて自然と精液と大便に変化していくらしく、その身をしぼませながらもこんこんと湧き出す液体は僕たちの日々の糧となった。
ときどき、カラさんは洋さんの不在をいぶかしむ。しかしそのたび、ロリドルのDVDが届いたり脱糞したり呼吸をしたりして、そのすぐ後にはもう先ほどの違和感をカラさんはすっかり忘却してしまうのだった。
もはや閑古鳥すら寄りつかない、うだつのあがらない法律事務所。
なにもせずとも一日は終わり、伸びきった影はうすぼんやりと暗闇に溶けていく。
遠く沈む夕日をながめながら、もう手のひらサイズにまで縮んでしまった洋さんから今日もココアを作る。
僕もカラさんも、きっとながくは耐えられない。
ゆっくりと、しかし着実に衰弱していく四肢と意思とを、今日はまだこのココアが支えてくれている。