The Talented Mr.Y (15)

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4 - 4/7 (sage) 2016/04/07(木) 20:10:33 ID:/escYxyk

家に帰るとさっそく冷たいシャワーを浴びる。なぜ。どうして。堂々巡りの思考とは別のところで、じゃああのおぞましいキスマークはY岡がつけたものだったんだな、と知った。温い涙が水と混じって頬を伝い、口の中に塩味が広がる。自分はホモフォビアだったっけ。そういう訳ではなかったはずだ。弁護士は偏見を持つべきではない。あの事務所で行為に及んだことを許せないんだ、あの2人だから嫌なんだ。

アイス、もったいないことしたな。どろどろに溶けたそれらを僕は駅のゴミ箱に捨ててきた。
一息ついたところで冷蔵庫からビールを取り出して飲む。髪を拭きながら灰皿を引き寄せて、なんとなくテレビをつける。何本か空にしてから、そう言えば明日もあの事務所で働くんだ、と当たり前のことに気づかされる。もしかしたら今日初めて気づいただけで、彼らは前から事務所であんな行為を繰り返していたのかも知れない。******。
大学で出会って、語り合って、同じ夢を追いかけたのは僕だったのに。耳の中で扉越しの喘ぎが蘇る。好きだった。ずっと。本当に。今更気づいたってどうにもならないのに。ただ傍にいられればいいと思っていた。それを愛と呼ぶことに今まで気づかなかった僕が無能なんだ。

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。目が覚めて出勤時間を過ぎていることに気づく。変な体勢で寝たせいで身体のあちこちが痛んだ。何か夢を見たような気がする。思い出せないし、思い出したくないし、思い出してはいけない気がした。
「今日は休みます」
メールをして再び布団に潜り込む。こびりついたY岡の声は布団の中で丸まった身体の上を這い、僕の性器に柔らかく絡みつく。次第に速まる右手のテンポに合わせてY岡の声は細切れになっていく。
僕がKだったら、彼に愛されていたんだろうか。Kから全てを奪えば、僕はKになれるんだろうか。
やがて射精して、僕はKから全てを奪うことをぼんやりと決意した。
******。