2 - 2/7 (sage) 2016/04/07(木) 20:04:57 ID:/escYxyk
「Kが結婚するまでの間、何かやらかしてしまわんように監視してほしいんぢゃ」
ある日、突然やってきたKの老いた父親は哀れっぽく僕の足元に座り込み、ズボンに縋った。なんでも相手はどこかの金持ちのお嬢さんらしい。いまどき珍しいくらいネットに疎くて、Kの悪評も知らないんだとか。気に入らない。なんで奴はこんなに恵まれているんだ。権力の傘の下で、きっとこれからものうのうと生きていくんだろう。******。
「もちろん、いいですよ」
Hがパッと顔を上げ、ほっとしたように笑う。僕がこんなことを考えているなんて思いもよらないのだ。自分の愛する息子が自分以外にも愛されていることを疑わない。それってすごく幸せなことだ。
「そのかわり、僕の靴の裏舐めてもらえます?さっきガム踏んじゃったみたいで」
ほんのいたずら心だ。これくらい許されたっていいはずだ。僕には苦痛が待ち受けているに決まってるんだから。
「その、そうか、そんなことでいいなら」
いくらか迷う素振りを見せながらも頷いたHはなんだか滑稽で、かわいそうだった。
「冗談です、先生ともあろう方がそんなことをしてはいけませんよ」
助け起こしながら服についた埃を払ってやる。
「ありがとう、Y本くん・・・」
「気にしないでくださいよ。ね、先生」
「ありがとう・・・ありがとう・・・それではよろしく頼むよ」
そう言って帰ろうとするその背中に、先生、と呼びかける。
「僕、事務所がほしいな」
「事務所あげりゅ・・・あげりゅよ・・・」
Hは引きつった笑みを浮かべながら頷いた。