1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/03/11(金) 20:04:09 ID:xW57j41M
業務開始時間の30分前は男にとっての定刻だった。
通いなれた職場に今日もその定刻通りにたどり着いた。
都内有数の一等地、六本木にそびえたつ巨大な高層ビルは、
ここを仕事場とする全ての人々が世間から称賛と尊敬の眼差しを浴びる事を証明してくれる。
壁に貼り付けられた奇妙なシールを見て男はため息をついた。
数日前、一軒の法律事務所がビルに入ってからおかしな輩が仕事場の周りをうろつくようになった。
彼らは日常的にビルにしょうもないいたずらをしてはその光景を、あるいはビルその物をスマートホンで撮影し、笑みを浮かべながらその場を去っていく。
自分の会社の郵便ポストにも時たまおかしな文章が放り込まれる。
厳重なセキュリティを通過し、彼はビルの案内板に書かれた諸悪の根源を名前を睨み付けた。
「法律事務所クロス」
(このビルのセキュリティがここまで厳重ではなかったらどんなことになっていただろうか?)
嫌な想像を頭からかき消すと男は仕事場に向かっていった。