2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/02/06(土) 21:12:10 ID:A6eRw0wA
唐澤貴洋用トイレの中は、大便器の小部屋が一つと洗面台一つがあるだけのこぢんまりとした空間だった。
ただ不思議なのは、普通のトイレと違って仄かな加齢臭が漂っていることである。
不思議に思いつつも、加齢臭の源である小部屋の扉に手をかける。そして開いてみるとそこには、
「たったかひろ…飯をくれ…」
有能会計士、唐澤洋の姿があった。
大便器の代わりに小部屋の中に固定されている彼は、産婦人科でよく見る分娩台の上で、いわゆるM字開脚を披露していた。僕の股間も思わず盛り上がる。
「たかひろ…頼む…糞をしてくれ…」
目隠しされている彼は、僕のことを唐澤貴洋だと思っているのだろう。しきりに食料を要求してくる。
だが、僕は唐澤貴洋ではない。先天性の唐澤貴洋なんて、そうそういるはずもない。
その懇願に不気味なものを感じ、僕は足早に立ち去ることにした。
唐澤貴洋用トイレの中には、”洋“式便器があるーーそれは過去の話である。
冷静に考えて欲しい。
頭唐澤貴洋が、トイレで用便すると思うだろうか。
つまり、来るはずのない唐澤貴洋の糞便を待ちわびるしかない唐澤洋が生き延びる確率は初めから0だったのだ。
そうして、この国はまた一人の有能会計士を失った。
そういえば、唐澤貴洋用トイレなんてものを考案したのは誰だっただろう。確かあの、もみあげが黒い、腹黒そうな、唐澤洋を敵視していたーー。
刹那、後頭部に激痛を感じた。
黒いもみあげが視界に入る。
そしてそれが、僕の最期だった。
終わり