Kの国 (65)

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6 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2016/01/30(土) 18:05:35 ID:Av5f203M

 唐澤の国に送致された小関直哉は早速裁判にかけられることとなった。彼の裁判は唐澤の国最高裁判所地下法廷にて開かれた。

「被告人、我々は日本とは違い真の文明国であり、今回の裁判には君にもちゃんと弁護人が付きます。 その点は安心してください」
髭を生やした、恰幅の良い裁判長がそう宣言する。

「弁護士の唐澤です」
そう自己紹介した弁護人を見て法廷がどよめく。 何を隠そう、弁護人となったのは小関直哉に海を越え侮辱された当の本人、唐澤貴洋だったのである。
自身を侮辱した人間の弁護をするとは。 その海より深い度量に感動しむせび泣く傍聴人もいる。

「被告人」
おごそかに裁判長が切り出す。
「なぜ、あんなことをしたのですか」

「俺、いや私は日本に誇りを持っているんだよ、悪いかよ、自分の生まれた国家に愛国心を持つ人間としてあの行動は当然のことなのかなぁ、と。」
奇妙な敬語を使いながら、吃音の酷い声で小関直哉が答える。

「ではあなたは、日本への愛国心が高じてあのような事をしでかしてしまったと」
「その点について、検察側の主張と見解を述べさせていただきます」
眼鏡をかけた若い検事が挙手し、割って話に入る。

「被告人は、惨めな人間でした。 驚くべき事に彼は高校でも専門学校でもまともな人間関係を築けず、発展途上国並の時給の小汚いパート仕事を二十代半ばになっても続けていたのです」

陪審員たちがざわめく。冗談だろ、といった声が聞こえる。 裁判長は、静粛にと彼らに注意した。 検事は続ける。

「それゆえ彼は身近に真っ当な帰属集団を持てていません。 そんな彼にとって『日本人であること』というのは自尊心そして帰属心を満たす唯一の方法だったのではないでしょうか。 こちらは彼が好んでプレイしていたゲームです」

小関直哉の様なゴミブサイク劣等障害児とは決して釣り合わないであろう二次元美少女たちのイラストが、法廷のスクリーンに映し出される。オオッ、と声が上がる。

「これは七十五年ほど前の戦争を題材にしたゲームです。 注目すべきはゲームではなく彼がこれをプレイしていた状況です。 なんと彼は、七十五年も前の別の日本人の感動エピソードの数々に、自身の日本人としての誇りを見出していたのです」

また法廷が揺れる。七十五年前、唐澤の国はまだ未開の地に過ぎなかった。 恒心国民たちにはそんな昔に誇りを見出すという発想が理解できなかった。
今と将来の自分自身に誇りを持たなければ恒産など有り得ないからだ。小関直哉は俯きながら何かをブツブツと呟く。

「検察官、それはニワカには信じ難いですね。 そのゲームをプレイしていたのはただキャラクターが可愛いから、では無いのですか」
「いいえ。彼は旧日本軍のお涙エピソードをアフィリエイトブログとwikiで読み漁っては自尊心を満足させ、自身の小説や自分語りでも事ある毎に史実、史実とほざいていました。 彼は惨めな自分から逃げようと、高潔な生き方を貫いた先人の子孫であることに救いを求めたのです」

「ヴオオ゛オォーッ」
ブルブルと震え屈辱に耐えていた小関直哉が遂に霊長類の咆哮を繰り出す。

「俺は史実を愛する日本人だ」
小関直哉はそう叫びながら、そのダウン症丸出しの顔面をしかめグルリと法廷内を見回す。
「被告人、黙りなさい」
裁判長が声を張り上げ警告する。

「歴史も無いようなお前ら劣等民族とは違う」
なおも頬骨ゴリラガイジが叫ぶ。
傍聴席が呆れ返ったようにざわめく。