カラドックスとたわむれる (56)

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8 - 8/8 (sage) 2016/01/25(月) 00:09:59 ID:x6x6OrKc

 ピンサロの男は忙しそうだった。
 なんでもこのところ客が増えているらしい。
「こういったところが繁盛するのは、まあいいことさ」と男は言った。「一種平和の象徴だからね」
「平和の象徴」、僕は繰りかえした。
 男はうなずいた。

 ***

 カラクリ工場からは今日も黄色い煙と赤い煙があがっている。 
 もはや僕らの作る武器がどこまで通用するのかはしらない。
 それでも僕らは27時83分に仕事をはじめ、40時298分に仕事を終わらせる。
 意味はあるのかな、とたまに考える。それからその考えを振り払う。意味なんて考えだすときりがないのだ。ただの作業だ。そう考えるのだ。

 ともかく、前提がある。「東の国に反撃させること」だ。
 推論がある。「神聖六文字による攻撃は効果的」だ。
 じゃあ結論はなんだろう。僕は手をとめ、工員たちを見つめる。
 僕らは実際、神聖六文字のようなことをしたかっただろうか。そんなことはないはずだ。
 結局我々は何を求めている?
 裏通りの店や博物館やピンサロの男たちを思い出す。
 彼らはその受け入れがたい結論に耐えきれなかったのだろうか?

 そのとき、「手を止めるな!」と注意されたので僕は慌てて作業に戻った。
 やはりこういったことを考えてはいけないのだ。無言で手を動かすのが一番なのだ。

 ***

 カラドックスが今日もわらっている。