カラドックスとたわむれる (56)

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4 - 4/8 (sage) 2016/01/25(月) 00:06:25 ID:x6x6OrKc

 戦争は泥沼化しているらしかった。
 東の国は僕らの国の攻撃に対し徹底した防衛策を取ることにしたらしく、なかなか攻撃が成功しないということだった。
「今こそ君たちの作る武器の出番なのだ」
 ある朝工場へやってきた軍人は僕らの前で力説した。
「神聖六文字しか、もはや奴らにダメージを与えるすべは残っていない。諸君には徹底した選別並びに製造を求める」
 僕らは無表情にその言葉を聞いた。
 やがてサイレンが鳴ったので、静かに持ち場へ戻った。

 ***

 それからしばらくして、西の国では内紛が始まったのだとうわさが流れ始めた。
 なんでも街同士で小競り合いが始まり、それが大きな規模で広がったらしい。
 小競り合いの内容は、語る人間によってまったく異なった。
 裏切って東の国についたからだ、という人間もいれば、意見の食い違いがやがて暴力沙汰になったのだ、という人間もいる。
 共通しているのは、ともかく西の国で内紛が起こっている、という事実だけだ。

 ***

 僕はまたピンサロに来ていた。もう常連と言ってもよいかもしれない。
 ここの雰囲気が僕は好きだった。何が起ころうとここでは、男たちが僕を射精に導いてくれる。
「この国は負けるのかな」と僕は男にたずねた。
「さあどうだろうね」と男は服を脱ぎながらこたえた。「もしかすると、軍人の数が減るかもな」
「どうして?」
 男は僕をしばらく見つめると、ふっと微笑した。
「攻撃されるのに最も弱いのは、攻撃する人間だよ」
 煙草をくれ、と言われたので僕は渡した。そろそろ切れてしまいそうだ。