3 - 3/8 (sage) 2016/01/25(月) 00:05:47 ID:x6x6OrKc
「西の国の『とある街』から来たんだ」とピンサロの男は言った。
彼は僕の煙草を物欲しげに見つめていたので、僕はそれを一本やった。
つい数分前に僕を射精に導いた唇が煙草をくわえる。
湧き上がる煙。
「きみの煙草はなかなかのもんだ」と男は言った。それは僕を少しだけうれしい気持ちにさせてくれた。
「西の国」、僕は繰り返す。「どの辺に住んでたの?」
「『とある街』だ」とだけ男は言った。「いろいろ嫌になったのさ」
「どうしてここへ逃げてきたのかな?」
男はこたえずしばらくケムリを吐き出していたが、やがて天井を見つめこたえた。
「あそこはひどく窮屈なんだよ」
「へえ」と僕はこたえた。「このピンサロで働く方がマシなほどにかい」
「ここは少なくとも窮屈じゃない」と男はこたえた。「なんでもありさ」
「家族や恋人は?」
「家族はいない」、男は言うとフィルターまで燃えてしまった煙草をぺっと吐き出した。「恋人は捨てたよ」
僕はこたえず店を出た。