カラドックスとたわむれる (56)

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2 - 2/8 (sage) 2016/01/25(月) 00:05:05 ID:x6x6OrKc


 唐 唐 唐 唐 唐 唐

 僕に割り当てられた仕事はラインを流れてくる「唐」の文字を見つめ、その中に不良品があった場合、それを選り分けることである。
 ひどく簡単に説明してしまえばライン工のようなものだ。
 しかし、「唐」という文字はなかなかに選別が難しい。
 「口」の部分が「ロ」のようになってしまっていることもあれば、「コ」のように一辺が欠けてしまっていることもある。
 ひどいときには、「曰」のようにまったく別のパーツがひっついてしまっているときもある。 
 僕の仕事はそういった不適切な「唐」をおびただしい「唐」の中から選別し、手押し車に載せて処理場へと運んでゆくことなのだ。

 仕事は朝27時83分に始まり、夜の40時298分に終わる。これはかっきりと決まっていて、けしてそれより早く始まることもないし遅く終わることも無い。
 それはこの単調な仕事のなかでもよいところだ。
 27時83分ならそれほど早起きをせずにすむし、40時298分に終われば少しは一日の中に自分の時間をもてる。
 僕ら工員は余った時間を利用して町へ行き、ピンサロへ行ったり焼酎を飲んだりする。
 そして夜は更け、朝になれば工場のサイレンが鳴り響く。

 僕がその「自分の時間」に行くところは、たいていの場合博物館だった。
 そこには様々なものが展示してある。
 北の国の文豪が記した書物や、南の国で暴れ回っていた小悪党の使っていたラブ・ドールなんかだ。
 僕は東の国のものを眺めるのが一番好きだった。
 東の王は2人いるらしく、1人は若く、1人は中年であるらしい。
 博物館には彼らの残した文章や肖像画が展示されており、もれなく事細かに注釈がついていた。
 そしてそれらには必ずこう付記してある――「打ち倒せ。東の悪党どもを。たとえ70年かかろうとも」。

 西の王は誰なのだろう、と僕はいつも考える。