4 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2016/01/18(月) 16:38:24 ID:QaFc/u.c
「彼はいつまでああしているんでしょう?」
店主が《カラ・ルアク》を持ってきたとき、私はロリコンたかひろを指さしてたずねた。
「いつまででも、ですよ」と店主はカップを置きながらこたえた。
「たとえそれでむなしく一日が終わったって、彼はそんなこと気にも留めないんです」
「無能な生き物だなあ」
「永遠の臥薪嘗胆の日々。それが彼らの魅力です」
店内にBGMは流れていない。壁掛け時計の秒針の音と、時折たかひろたちがモゾモゾ動く音だけが響いている。
アイスの棒をかじっていたたかひろが、他のたかひろに尻をふってみせた。セックス・アピールだろう。
もう一匹のほうもその気になったらしく、彼らはディープ・キスをはじめた。
「今日は静かですね?」、私は舌を絡めあうたかひろたちを見つめながら店主に言った。
「最近はこんな調子ですよ」と店主は肩をすくめた。
「たかひろブームも去ったようです。みんな結局、イヌやネコが見たいんでしょう」
「でも見ごたえのある動物だ」と私はホモ・セックスをはじめたたかひろたちを見ながら言った。
全身から滝のように汗を流しながら盛り合うその姿は、実際見ごたえ充分だった。
「そう言っていただけるとなりよりです」と店主は微笑を浮かべた。
「唐澤貴洋の尻には母性を感じる」
「僕もそう思いますよ」、店主はバックヤードへ去りながら言った。「ときどき、あの尻を枕にして昼寝してみたくなります」
腰を振っていたたかひろが、ひどく切なげな表情で身を震わせた。どうやら精を出し終えたらしい。
残りの2匹は何をしているのだろうと目をやると、一匹はまだロリドル鑑賞をしており、もう一匹はあいかわらずバインバインと前後に揺れている。
彼らの中では、時間というものはいったいどういった構造で流れているのだろう、と私は首をかしげた。
《カラ・ルアク》はカップの中で湯気を立てて存在していた。
その色は用水路の底にたまった汚泥のようで、立ち上る香りはもう何年も掃除されていない公衆便所のようだった。
つまり非常に不味そうなわけだが、毒でもないだろう。
どうせ注文したのだし、と一口カラ・ルアクをすすってみた。
ブラックなのに妙に甘味を含んだコーヒーだった。たかひろの尻のように、どこか母性を感じる懐かしい味わいだった。
なるほど確かに独特だな、と私は頭の隅で思った。