たかひろカフェ (14)

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2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2016/01/18(月) 16:35:37 ID:QaFc/u.c

◆2

 私が件の「たかひろカフェ」を訪れることに決めたのは、一度唐澤貴洋という動物を間近で眺めてみたくなったからだ。
 ウィキペディアによれば、唐澤貴洋は4年ほど前に日本で発見された新種の動物。
 学名はケレセウェチェケヒル(ラテン語で「偉大なる弁護士」を意味する)であり、生物学上は哺乳綱サル目ヒト科亜種ホモ・カラサワに属する。
 遺伝学者によれば、彼らと人間のDNA配列は、イヌと人間のそれよりも一致しているが、チンパンジーと人間ほどは似ていない。
 知能は低いが、降ったばかりの若い雪のような清廉な心を持っている(とたかひろたちは自己分析している)。
 雑食であり、基本的には何でも食するが、ピーナッツだけは嫌がる。好物は焼肉と刺身。飲酒の文化をもち、とくに焼酎を好む。
 
 彼らの繁殖方法は、主に人間の男性を拉致してのホモ・セックスだ。やせていようが太っていようがイケメンであろうが年寄りであろうが掘る。
 たかひろ同士が掘り合うこともあるが、それは繁殖よりもむしろ、愛なき時代に愛をもたらすための行動であるらしい(少なくともたかひろたちはそう考えている)。
 たかひろにはロリコンも多いので(全体の40.298%がそうだ)、幼女をさらって孕ませ、種族を増やす場合もある。
 つまり彼らが繁殖するうえで、対象の性別はあまり問題にはならないのだ。

 発見時から人間たちはたかひろを家畜としてきたが、その肉はあまりにも脂肪が多いので食用には適さない。
 代わりに彼らは主にペットとして扱われ、その扱い方は神格用、殺害用、愛玩用の3種にわけることができる。
 無能であるたかひろの中でも、ある程度出来の良いもの――ポエムを書いたりできるもの――は「神格用」として販売される。
 そこまで賢くはないが、気性が穏やかで夜きちんと眠るものは「愛玩用」とされ、残りのものは「殺害用」として出荷されている。
「神格用たかひろ」は大体300万円ほどで販売され、「愛玩用たかひろ」は30万円ほどで手に入る。どちらも安いとは言えない。
「殺害用たかひろ」は手ごろな価格で手に入るのだが、言うことはまず聞かない。身を震わせるか、そうでなければ時折絶叫脱糞するくらいの能しかない。
 その名のとおり、殺す以外、特に使い道はないのだ。
 愛玩用の代わりに殺害用を購入した飼い主がその無能ぶりに手を余らせて山に放ったものが野生化し、一時期社会問題になったことはまだ記憶に新しいだろう。
 野良たかひろと来たら、深夜3時に絶叫するしそこら中にフンをまき散らすし書店で岩波文庫のクルアーン全3巻を燃やすし、
 おまけに下校中の女子小学生を時折さらってゆくという厄介極まりない存在なのだ。

 以上のように、たかひろは自宅で飼育するには高いし食費もかかるしデカいし無能なので、一般市民には手が出しにくい。
 第一、見栄えが悪い。「美人は3日で飽きる」と言うが、それならあのベイビー・フェイスは0.3秒で飽きる。ネコでも飼った方がマシだ。
 象やイルカや唐澤貴洋のような動物は、精密に管理されたしかるべき場所へおもむいて、時折眺めるくらいでちょうど良いのだ。
 ゆえに、私はその日「たかひろカフェ」を訪れた。