2 - 2/3 2016/01/11(月) 04:18:59 ID:MN98w5M.
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先日のこと。
「君に面白いものを見せてあげよう」
と、知り合いの会計士Mに誘われた。
ついていった先にあったのは、東京都港区虎ノ門の某ビル4階。
こんな薄汚れた何の変哲もないビルに一体どんな面白いものがあるのだろうか、と訝しげに思いながら、Mに促されるままに目的の部屋のドアを開けた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!…)」
部屋の大部分を占めんとする極太のパイプの真上に、全裸の醜い中年小太り男が吊るされ、その足はM字開脚になるよう縛られていた。
男はけたたましい悲鳴をあげ、その汚らしいイボまみれで黒ずんだ尻から、轟々と鳴り響くナイアガラの滝のごとく下痢を垂れ流していた。
時々赤い血が混じっているのが見える。きわめて高圧で下痢を放出しているからひどい切れ痔になったのだろうか。男の垂れ流す下痢は、真下の極太のパイプへと流れこむ。
特筆すべきなのは、男の垂れ流す下痢から漂う臭気である。ヒトの糞便とはかけ離れた臭気――石油の臭いがするのである。
あまりの光景に呆然とした私は、下痢の飛沫が顔にかかっても拭うことすらできなかった。
Mは、完全に思考が停止した私に向かって熱っぽく語り始めた。
「面白いだろう。この男、名前はTって言うんだがね。
簡単に言うと、この彼が、全世界に流通する石油の全てを産出しているのさ。
フル稼働させたら、一ヶ月でおよそ40298億バレルの石油を生産できる。今のところ、枯渇する様子はない。どうだい、すごいだろう。
そうそう。Tが攫われたりでもしたら大損害だからね。この辺り一帯は警察に守らせてるんだが、まだ不安だねえ。
――君はもう察したかな。そう。石油が枯渇するなんのはデマなのさ。もっというと、太古の動植物の遺骸が石油になるなんてのはできの悪いファンタジー小説もいいところだ。
あんな馬鹿げた説を信じ込んでいる連中は――おそらく君もこのTを見るまではそうだったんだろうが――想像力が豊かでいいねえ。
だが現実はそんな美しない。この出来損ないのTがひり出す下痢こそが現代社会の礎なのだよ。
下痢に縋って生きているくせに、綺麗に着飾ったり、美食を追い求めたり。人間ってのは滑稽な生き物だねえ。
ま、Tが死ぬまでは――すなわちこの"油田"が涸れるまでは――人類は安泰なんじゃないかな。ワッハッハ」
にわかには信じがたいことだが、この醜いTの垂れ流す「下痢」こそが全世界に流通する石油であり、われわれ人類の現代文明を支えているというのである。
一体どうやってMはこの"油田"を発掘したのだろうか。"油田"はどうやって産油し続けているのだろうか。
なぜ人間が石油を産出できるのだろうか。垂れ流す下痢の量は明らかに腹の体積を超えているが、いったいどうなっているのか。
相対性理論を考慮した場合、質量保存の法則が厳密には成り立たないということはぼんやりと知っていたが、世界中のどこを探してもTの垂れ流す下痢について合理的に説明できる物理学者はいないだろう。
受け入れがたい事実というものにも限度があるだろう。ふざけるな。考えてもきりがない目の前の不条理に対して5周くらいした怒りが沸き起こる。
腹が立ったが、どうすることもできない。とりあえず私は、悲鳴を上げて失神することにした。