16 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/11/09(月) 23:43:24 ID:kPaKyqPA
◆8
街灯に映し出された2人の影が、交わったり離れたりを繰り返しながら道を進んでゆく。空には鈍い黄金の月。
「ご感想は?」
視線を地上へ戻し、帰り道で前を行く後姿に声をかける。
「お前はどう思ってるの」、振りかえらないままに飛んでくる返答。
「あなたは途中で帰らなかった」
「お情けだとは考えないのか? 最後の」
「僕はオプティミストですからね。物事をあまり悪い方には考えたくない」
どの口が言うんだか、と後姿は大きくため息をつく。
「少し意外だったよ。優等生君なら優等生なやり口で来ると思ったんだけどな。万人受けはしないだろ、ヒジョーに独創的だね」
「僕にとっての問題は、《あなたが》どう思うかだ」
「……そうかい」
冷えているからか、ずいぶんと星がよく見える。故郷にいたころ、僕は東京ではまったく星が見えないのだろうと漠然と思っていた。
知らないくせに思い込む。
白い息が出ないだろうか、と試みに息を吐いてみるが、さすがにそれはまだ先の話のようだ。
「まだきいていませんよ。あなたの感想」
「ききたいか」
「もちろん」
振り向いたその人は、僕を上から下まで見つめたあと、言った。
「まあ、楽しかったぜ」
微笑んだ僕に、つづけて言葉が飛んでくる。
「でも、もう会うのはやめだ」